16
私は学習した。入学式の時のようにならないように、本を持ってきたのだ。これで、ガイダンスが始まる前の借りてきた猫状態の空気から抜け出せる。
バックからブックカバーの付いた本を取り出して、本の世界へ入り込もうとした時である。
「中島」
肩を叩かれたと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「・・・・・・・立川君?なんで、いるの?」
「察してくれ。それに、俺も同じ質問をしよう。中島こそ、なんでいるんだ?」
「国語以外が散々たる結果だったからだよ。午前中の講義を受けるか、午後の講義を受けるか迷ったんだけど、午前の講義を受けることにしたんだ。それなら、午後の甲子園もプロ野球中継もじっくり観れるでしょう?」
「国語以外と言うことは、毎日は来ないのか?」
「うん。月、水、金に受ける予定だよ。」
「なるほどな。」
納得して、頷いた後マジマジとこちらを立川少年が見てくる。
「ど、どうしたの?」
「いや、中島と話をするのは久々だと思ってな。」
「そうだっけ?」
「あぁ、別のクラスだからめったに会わないしな。オリエンテーションの時もバタバタして話をする機会もなかった。」
「じゃあ、これから話ができるね。」
周りに野球の話ができる人がいなかった為、急に仲間ができたことが嬉しく、笑顔で応えた。
「そうだな。改めて、よろしくな。」
「どのタイミングで声を掛けようか?高木さん。」
「えっと、木村君に任せるよ・・・・」
近くにいる、高木さんと委員長に気づいたのはそれから五分後だった。
『居るなら声をかけてくれれば良かったのに?』
『ゴメンね?邪魔しちゃいけないと思って。』
『邪魔?』
『立川君だっけ?君も中島さんも鈍いね。』




