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「平和だなぁ~」
「唐突にどうしたの?」
昼休みを図書館で過ごしながらでた呟きが聞こえたのか、高木さんが聞いてきた。
「ん~と、高木さんって同級生にアイドルがいるって知ってる?」
「寺岡君だよね?話した事はないけど、テレビで最近よく観るよ?」
「私は観た記憶がないんだけど。」
「・・・・中島さんって、いつもなに観てるの?」
「スポーツチャンネル。」
「じゃあ、CMで観たことない?」
「基本的に、TVショッピングかスポーツ関係のCMしか流れてないよ?」
「本当に、野球が大好きなんだね。」
図書館に配慮するように、小さく高木さんは笑った。
「まぁね。話は戻すけど、私が寺岡君にカレーをあげた事で、寺岡君が懐いて私の所に来るようになって、ファンクラブから呼び出しがくると思って戦々恐々としたんだけどね。」
「・・・・・最近、何読んでるの?」
「ふむ。携帯小説の文庫本に挑戦してみたんだ。読まず嫌いは良くないからさ。」
「そうなんだ。あれ?でも来てないよね?」
「うん。代わりに立川君がお礼の品を持ってきたんだ。」
私は、ポケットの中からがま口の小銭入れを取り出した。
「可愛いね!でも何で立川君が?」
高木さんは首を傾げた。
「恩を仇で返すような行動はしたくないんだって。一緒に入ってたカードに書いてあった。」
これには、寺岡君を見直した。今度、会話するときは、若干優しくしようと思ったのは言うまでもない。
「だから、平和を噛み締めてたんだね。」
「そうだよ。平和じゃなかったら、ここで本なんて借りられないよ!!平和、万歳!!・・・・・あっ、本借ります。」
会話を切り上げて、顔馴染みになった司書の先生に本を渡した。
「中島さん、ごめんなさいね。今日から試験期間で本借りれないのよ。」
・・・・・・・・平和じゃなかった。




