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◇2◇ウメは何気にイケメンです

説明回。しかし続くかどうかは未定です。


て云うか、生存報告を兼ねてupです。ん?アレとかソレは?

いやはや(^。^;)

☆☆☆


 現在俺は庭で野良猫を餌付けしている家主を、屋根の上から見下ろしている。近所の美猫とイチャイチャしていた俺のナマエはウメである。端から見れば稀に見る美猫の母仔おやこであろう。

 常に仔猫の姿をしているが、ニャンニャンするのに支障は無い。下品か?下品なのは良いとして、少し寒いかな。ニャン仔だけに……みたいな?うん反省。自省は必要だな。自重しよう。


 時折、怨めしく俺を見上げる視線を感じる。俺の姿はフワフワと小さな仔猫である。黒猫だが不吉さより愛らしさに溢れた姿は人間の女性に大人気だ。しかし俺は仔猫にも拘わらず一帯のボス猫である。俺は普通の猫が勝てる様な「真っ当な」仔猫では無い。わざわざ弱い振りをするツモリも無かった。

 普通は仔猫なんぞに良い成猫おとなが喧嘩を売るわけも無いのだが、何故か雌猫にも大人気な俺は非常に妬まれた。まだニャンニャン出来ないならオトナの余裕をかます奴もいただろうが………そこはソレ、なあ?な訳で。

 まあ、アレだなあ。雌の本能ってモノだろう。強いモノに惹かれるのは生存率を引き上げるからな。だが、しかし。


 ふと思ったんだが………猫でハーレム作ってナニがしたいんだ俺は。




 俺の主食は人間の美女である。より正確に云うならば、美女の生命いのちであるが、この云い方は誤解を招くだろう。生命力や精、と告げた方が近いが、此処はオーソドックスに血液とでも云うべきかも知れない。

 考えて見れば洒落にならない年月を猫として生きてきた。その所為か近年は美猫びじょも美人もオナジく美女だと思えるんだが………よくよく考えるとオカシイような気がしないでも無い。



……………


………………………





………だが。




 別に問題は無い……のか?


 猫の姿で過ごす内に、随分とお気楽になってしまったが、実のところ自覚したのは最近だった。昔の友人ツレに再会して、あの頃をまざまざと思い出したからと云うよりも…………あの頃の友人に対して、己が語りかける声が、余りにも違うから気付いた変化である。いや、本当に声に出した訳では無いがな。


 昔の俺は、何と云うか一匹狼みたいなところがあった。孤独だの悲哀だのって言葉が似合う、ハードボイルドな色男だった気がする。これは別に自惚れでは無い。俺の主食は美女だから、女からどの様に見えるかは殆ど死活問題でもある。別にモテなくても力付くでどうとでもなるが、そんな風情の無い真似はしない。


 昔。昔の俺。昔。昔の………仲間。

 そう云えば、友人と出逢って孤独を慰めた俺だったが、生まれた頃から孤独だった訳では無かった。


 寧ろ。


 余りにも。


 満たされていた。



 ふむ。懐かしい。な。


 これは中々の新境地。不思議な心境だった。当時の俺は、俺の孤独を癒す友人から、過去を連想して視線を背けた。つまりは見たくも無い過去だった訳だが、イマの俺は、その過去を懐かしんだ。戻りたい訳では無いし、同じ状況に陥ればヤハリ受け入れはしない。俺は俺だ。


 あの。全にして個。全ての仲間と精神を繋ぐネットワークは、我の強いモノには耐えられない。

 ある意味で我は強いがな。ミンナがオナジ、ワタシダカラ。いや違うし、オナジじゃねえし。……と、そんな事を思う俺は異端者だった。思い出すにアイツら気持ち悪い。

 自分の心を浸食して操る輩なんぞ、俺には不要である。


 だが。

 心の奥底で、ワタシを……延いては俺を生んだ、命を生じさせた、ある意味で『親』であり、ワタシの絶対者に対する本能的な思慕が消しきれず燻っていた。アノカタのモトにモドリタイ。カエリタイ。還りたい。


 あの、ドロドロとした、気持ち悪い思慕の念が、綺麗サッパリ無くなっていた。


…………。


 本能の様なモノだった筈なのだが、これはどうした事だろうか?


 俺の主食を云えば、人間は俺を吸血鬼と呼ぶだろう。俺を生んだ『親』は、ある一族の始祖である。その一族は人間に『吸血鬼』として排斥された時代を知る、正に人間が呼ぶ吸血鬼の一族なのである。

 俺は少し違う。いや、俺が属していた『ワタシ』は、と云うべきだろう。『ワタシ』は『彼』が『生んだ』、ある種の寄生生命体だった。『彼』のチカラと精神から分かたれた、分身とも呼べる存在である。

 ワタシには肉体が無い。彼から直接分割され生み出された分身体は、十体も存在しないが、分身体から分裂したモノを含めれば、ソレは結構な数に上るだろう。

 中には自我に目覚め、『彼』が長を務める『一族』に属したモノも存在するが、本来の『ワタシ』に個の概念は無かった。

 彼らは複数だが複数では無い。人間の肉体に寄生して、ただ『長』のみに忠誠を誓う、道具である。

 聖野一族もまた、長に忠誠を誓うのは違い無いだろうが、彼らは一応『自分』と云うべき『個』であり、『我』を持つ。『ワタシ』にはソレが無かった。いや、ある意味では長の狂信者に近いソレこそが、『我』と云うべきかも知れないが、それでもその『我』は『ワタシ』であり各々の『個』では無かった。

 俺は直接『彼』から生み出されたにも拘わらず、そのネットワークに苦痛を感じた異端者である。

 誰かに寄生することにも嫌悪を示し、誰かの肉体を奪うことすら拒否した。別に困る事は無かった。

 能力は必要とするモノに与えられる。俺は自らの『意志』で、肉体うつわを形作った。


 その肉体が、『彼』に少し似ているのは、無意識に『支配者』を求めたからか、はたまた『子』が『親』に似ただけなのか。

 相似により、鏡を見るだに『彼』を、『過去』を想起して、俺は鏡を見ることを忌避する様になった。そして、人間ひとの姿を取る事を避ける様になった。



 だが、現在いま。俺は『過去』を忌避しない己に気付いた。


 だから。


 と云う訳でも無いのだが。


 久々に、人型ひとがたを取って街に出たが、『昔』以上に自分の姿を映しとるガラスや鏡に怯む事は無かった。


 ただ。

 久しく触れていなかった人間の美女に対して、やはり猫の美女と然して変わらぬ印象を受ける辺りが、地味に衝撃だった。猫の美女も人間の美女も等しく同じ美女である。

 しかし、人型で美女に触れてさえ、同様の感慨を抱くとは思わなかった。とはいえ、餌には違いない。

 猫の美女は多少ゲテモノ食いの謗りを免れ無いだろうが、餌は餌である。猫も人間も、俺からすれば愛玩動物でありと共に、栄養源である事は同様の存在だった。


 人間も猫も、美女たちは等しく俺に媚態を示す。これもまた、変わらぬ現実だ。

 俺は同属のおすとして彼女たちの欲望に応え、俺自身の欲を叶える為に『食事』をする。


 昔から。

 何ひとつ変わらない。


 変わらないが、確かに違う。




 俺はいつの間にか、生涯背負うと覚悟した呪縛から、解き放たれていた。


 本能から解き放たれた俺は、しかしイキナリ与えられた自由に戸惑うばかりだった。

 とはいえ。


 本能から逃げ続けてきた俺は、ただ自らと戦っていただけで、疾うに『自由』に暮らしていた。


 何も。何ひとつ。

 昨日と違う事は無い。


 昔と違う事は無い。


 ただ、生まれたばかりの短い期間。本能に縛られて『ワタシ』だった記憶と『彼』を思慕する想いと執着が、まるで他人事の様に遠かった。


 忌避するまでも無く、鏡に映る己が姿は、確かに『彼』に似ていたが、特に何の衝動も浮かばない。

 呆気ない程に、俺は自由だった。



 昔の友人に再会した際の衝撃を考えれば、俺の精神が鈍磨した訳でも無いだろう。ただ、『ワタシ』も『彼』も、もはや俺には重要では無い。

 そう云う………事なのだろう。



 精神の枷から解放されても、よくよく考えれば特に何の変化がある訳では無かった。俺は猫の生活が気に入っているし、家主の飼い猫の立場は存外心地好いモノだ。

 別に人間に紛れて暮らしても良いが、いま直ぐに決める必要も無いだろう。


 人間の時は短い。昔程では無いが、家主が生きている間くらいは、傍に暮らすのも悪くない。


 俺はそう考えて。


 食事を終えたら、真っ直ぐに帰宅した。





「お前はアレだよなあ。遊び過ぎだよ。今度はどんなビジンさんと遊んでたんだ?男の敵め!」



 もちろん、家主の云うビジンは美猫の事だが、今夜は本当に美人の相手をしてきた俺である。ちょっぴり後ろめたくて、視線が泳いだ。


 昔から、この友人は俺の女遊びに煩く説教をする男だった。しかし……そこは男の敵では無く、女性の敵と云うべきでは無いだろうか?少なくとも、昔の友人はそう云っていた気がするのだが。


「…ニァ。」


 どうやら純粋培養されていた友人も、現代に転生して多少は世間ずれしたらしい。少しばかり寂しい話だ。


 しかしだな?


「に。」


 お前はもう少し身なりに気を遣えば充分にモテるぞ?モテない男ぶっているが、大概のモテない男は努力が不足してるだけで、お前のは努力以前の問題だ。



「いや、問題点を逸らすなよ。」

「……………。」



 え?



 何で通じたし。






「……………。飯…食うか?」

「…………。に。《いらん》」

「そうか。」




 ええ?


 通じてるのか?勘か?昔の友人と付き合いがあった頃も、俺は稀に猫や鳥の姿を纏っていた。変化へんげした俺の言葉を、友人が理解した事は無かったが………いつの間にか動物の言語を取得したのだろうか?



「まあ良い。寝るぞ。」



 朝には早い時間だ。家主は欠伸をして、俺をヒョイと摘まみ上げた。

 肩に乗せられて、寝室に向かう家主に、俺は内心で首を捻っていた。



 こいつって………こんな奴だったか?





 人間は変わる。


 俺ですら、変わった。


 変わらぬモノなど存在しないが、それは…………決して悪いことでは無い。



 帰宅した俺を迎える為に、寝衣のまま玄関を開けた家主は、寒い寒いとボヤキつつも優しいとすら呼べる仕草で俺をベッドに迎え入れた。




 いや……男と寝るのはちょっと。


 ちょっとと云うか、ものっそ遠慮したいんだが。



 仔猫の姿とは云え、たかが人間の手から逃げ出せない筈も無いのだが。


 何故か、同じ布団にくるまれる仕儀となった。




 今度からは。


 夜が明けてから戻るとしよう。





 そう考えて、その日は諦めて男の腕に抱かれて眠った。



 非常に不本意である。



 俺は猫の時でも一緒に寝るのは美女に限定したい。



 もう一度云おう。非常に、非常に、ひっじょうに。

 不本意である。



☆☆☆





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