髑髏
「じゃあ、勝利条件は降参か気絶で判定するよ。あとこっちで戦闘続行不可能と見なした場合はストップ掛けるから、その時はどんな状況だろうと止まるように。目潰しなどの急所も極力禁止。あくまで陰陽師としての技の見せ合いとお互いの能力の発展や連携確認が目的だから。勝ち負けに拘って、汚い真似しないように。それと……」
とっとと始めさせろよ、リーダー。もう準備は出来てるって。
「それじゃあ、試合開始」
その言葉と共に、俺はお札から烏天狗と火車を出した。
手持ちの式神の名前くらいは、ばれているかもしれないが、細かい能力や俺の基本戦法は熟知してないはず。ただでさえ、あれほど俺を馬鹿にしていたのだから。
一番の決め手は、妖力吸収だ。鶴見牡丹以外はこの俺の新しい能力に気付いていないはず、だからこの技さえ綺麗に決まれば、俺にだって勝機がある。
「おい、馬鹿野郎。お前のその意味不明の自信がどこから湧いてくるのか分からないが、捕獲不能レベルの妖怪を手に入れたのは、何もお前だけじゃないんだぜ。現れよ、がしゃどくろ!!」
そこに現れたのは、巨大な上半身と両手のみの骸骨だった。俺の身長を遥かに越している、10メートルくらいはあるんじゃないかな。眼だけはしっかりあって、まるで俺を捕食動物をみるかのように、ぎょろっと見つめている。歯でガチガチという気色の悪い音を出している。
がしゃどくろ、聞いたことがある。埋葬されなかった死者の骸骨が集まって、一つの巨大な骸骨になったと言われる妖怪だ。夜中に人をあの両手で握り潰して食べると言われる。確か歌川国芳が描いた浮世絵で『善知烏安方忠義伝』ってのにあったはずだ。
今回はバイクを利用出来ない以上は、俺達の十八番の戦車で対抗するしかない。しかし、あれは俺が奴から、妖力を吸収して初めて完成するもの。だから何とかして、奴か奴の式神から妖力を吸収しなくては。
鶴見の牡丹燈篭も骸骨の妖怪だったが、あれは大きさが脅威ではなく能力が脅威だった。だが今回は純粋にパワー勝負になりそうだ。
「人間ってのは大半が楽観主義者だ。人生の逆算ってのが出来てねぇ。俺をどうやって倒すかの前に自分が何をしたら死ぬかを考えろよ、五分間息を止めたら死ぬなあ。醤油を一気飲みしても死ぬ。舌噛んでもしぬよな。だからだ。お前は俺と戦ったら死ぬってことを理解出来ない楽観主義者なんだよ、バーか」