条件
「でもさぁ、これじゃあお互いに納得がいかないでしょう。なあに、俺だって人間ですから、人生に関わるような怪我はさせませんよ。俺が勝ったらお前は大人しくここから出ていくんだ。いいな」
リーダーの指示を完全に無視して、勝手に話を進める松林。
「じゃあ俺が勝ったら、どんな目に合ってくれるんですか? 先輩」
俺も戦うこと自体は賛成だったので、言葉をかえした。
「あぁ、もう勝手にしなよ」
リーダーがようやく折れてくれた。これで戦えるぜ。
このむかつく元上司とよお。
「だけど、ここじゃ迷惑になるから場所を変えようかね、潔く霊界で戦うっていうのはどうかな。霊界の方が、周りの目を気にせず戦えるでしょ、人払いなんて仕事でもないからやりたくないし。フィールドの破損を気にする必要もなくなるから、文句ないよね。あと、試合に変な条件とか付けるのは禁止。あくまで模擬戦だ。もし負けたら出ていくとか、そんな下らないことを言うなら、そんな試合認めない。それでも納得いかないなら、僕が二人まとめて相手になる」
そこそこ真剣そうなリーダーの声にビビったのか、「それでいいっすよ」と、しぶしぶ頷いた松林。俺も別に条件などを気にはしていない。
……だが、もし言えたなら、『全国の陰陽師を襲うことの廃止』を条件にするつもりだったのだが、そんな都合よくいかないだろうとは思っていた。
「じゃあ、移動しようか。霊界に向かおう。昨日、行弓君と五十鈴ちゃんがホテルに帰った後に見つけた、とっておきの場所があるんだ」
ワープして訪れた場所は、海の上に浮かぶ島だった。無人島であるってもともと霊界にはそんなに人間はいないから、無人島で当たり前なのだが。
霊界の風景は現実世界とかなりリンクすることが多い。そもそも別次元なので、完全一致ではないのだが、昨日みた限り、無人島なんてなかったし。
六人で砂浜の上に立っている、俺と松林だけが距離間を持って離れていて、残りのメンバーは遠いところで横一列に並び、俺達を眺めている。
「お前、本気で俺に勝てるとか思っているのかよ」
「まぁ、楽勝とはいかないでしょうけど。勝ちます」
辺りを見渡すと、右には森林、左には海水の色が黒い海。バイクで戦うには、厳しいかもな。ってか砂浜をバイクって走れたっけ?
バイクは早いし、俺の場合安定感もあるのだが、まず海の上を走れない。森林も恐らく無理、木が危ないというだけでなくそもそもあんな足場でバイクが通れない、じゃあ砂浜は……大丈夫なのかよ……絶対に変な方向に滑るだろ、絶対に。
一気に機動力を封じられたな、ステージに。