挑戦
「ふん、お前みたいな迷惑な落ち毀れの顔をまた毎日拝まなきゃいけないなんて、まっぴら御免だぜ。だいたいお前は一度、陰陽師を脱退しているはずだ、そんな負け犬を匿うほど、俺達は人材を欲しいと思っていない」
「そこまでにして貰おうか、松林。いつの教育係か知らないが、現在の橇引行弓の指導官はこの私だ。この子の指揮権は私にある、よってお前一人の力でこの子をクビには出来ないはずだ」
「そもそも僕は、そんな横暴は許可してないよ~」
後にくっつけるように、リーダーが声を添えた。
「だから考え直せって言っているんだよ、五十鈴、リーダー。こいつがいたら邪魔、目障り、迷惑なんだ。何か問題が起きる前に、ここで消しておくのが、一番の得策なんですよ」
……俺はどうすればいい?
俺はこの光景を見て、自分がどうすべきか分からなくなった。
俺を仲間だと呼んでくれる人達が、俺を庇ってくれるのは嬉しい。だが、この男の言っていること自体はある程度正論だ、悔しいけど。
俺がこの百鬼夜行でどこまで役に立てるか、確かに俺は疑問に思っていた。昨日の一件で俺にだって出来るんじゃないかな、そう思えた。
しかし、現実はそう甘くない。俺の認識と世界の当たり前は全然違うのだ。
「とにかく、こんな雑魚はとっとと……何だ、お前ら」
下を向いて黙っていた俺の前に、あいつらが立っていた。
火車の人型モード状態と烏天狗。
「これ以上の行弓ちゃんの悪口は止めて貰おう。いくら百鬼夜行の仲間とはいえ、これ以上は式神として、耐えられそうにない」
「たかが、人間の小童が。わしから見れば貴様なんぞ行弓と大差ないわ」
勝手にお札から出陣した二人までも、俺を庇ってくれた。
……だが、どうしてだろう。安心したというより、何か悔しいという思いが大きくなっていく。
「ちっ、確かに昔から持っている式神だけは掟破りだったなぁ。まあ全く使いこなせず、ロクに命令も聞いて貰えない。折角の捕獲不能レベルの妖怪が台無しだったったという結果しか残っていないけどな」
「おい、ジーパン男。これ以上は止めろと忠告したはずだ」
「はっ、じゃあ見てみろよ。お前の主の無様な姿をよお」
……何っ、無様だと!? 話が拗れるのが嫌で、あえて黙ってやっていたのに。お前はそう捉えてやがったのか。
「また逃げ出せよ、最弱。ろくに役に立たない陰陽師さんよぉ」
俺は……もう逃げない。あの時、飛鳥と約束した。その言葉はここに来たからといって消え去った訳じゃない。過去を乗り越えなきゃ、未来には到達出来やしないか、ここまで喧嘩を売られて黙っているほど、俺は昔同様の、子供じゃないぜ。
俺はソファーから立ち上がった。
「ろくに役に立たない陰陽師だと、違うな。俺は特に何もしない陰陽師だ。表へ出ろよ、宣戦布告だ。いかに成長したか思い知らせてやる」