上司
「とにかく俺は絶対にお前を認めねぇ。とっとと、荷物まとめて百鬼夜行の前からいなくなれ」
凄くストレートな言葉だな、会う前からここまで嫌われているとは、確かに俺は上司だの先輩だのには、仕事に使えないという理由で嫌われることが多かったが、会う前から見知らぬおっさんに帰れ発言をくらうのは、さすがに初めてだぞ。前の五人が素直に俺を歓迎してくれたお陰で、俺の意識も下がっていたかもしれない、良く考えたら俺みたいなイレギュラーな陰陽師を組織全員に受け入れて貰えると、考えているほうが間違っていた。
「おいおい、僕の前で仲間割れなんて止めてくれよ、傷つくなぁ」
リーダーの発言に松林は、首を振りつつ反抗した。
「いいや、こんな役立たずは次世代を担う百鬼夜行には必要ありません。こいつは妖怪と友好関係を作りたいんじゃない、ただ誰にも相手にされずに妖怪に甘えるために逃げていただけなんですよ、下らない。だいたいこんな屑に何が出来るっていうんですか?」
「いや、昨日の任務ではすごく役に立っていたぞ。現に交渉のピンチを救ったのは、誰でもなくこの橇引行弓だ。役立たずという貴様の言い分には納得出来ないな」
俺の隣に座っていた追継が、俺を庇ってくれた。非常にありがたい、俺自身でも言い返したいことは山ほどあるが、その声はこの男には届かないだろう。だから、対等に思っているであろう追継が言う分には効果があるはずだ。
「それは交渉のときってだけだろう、大妖怪との交渉のやり方だけ聞き出せば、もう用済みじゃないですか。実践で役に立たないんじゃ、意味が無い」
「それも違うな、行弓は鶴見牡丹との戦闘で、捕獲不能レベルの妖怪を相手にして、勝利している。戦闘力がないとは思えない」
今度は五百機さんだった、俺が役に立たないという事実は正直本当なのだが、それを自分じゃない誰かに否定して貰えるというのは非常に嬉しい。
「全く五十鈴までそんなこと言って、あれは鶴見の馬鹿の自爆だったって、報告を受けているぞ。例えまぐれで勝利したからと言って、たかが一勝が何なんですか。俺はこいつの無能さを、直に知っているんですよ。なんせ俺はこいつの出身の機関に昔いて、こいつの教育係だったんだから」
っ!! 全員が驚いた顔をした。リーダーまでも。勿論、俺だって。
全員が声は出さなかったが、心底驚いている顔をしている。
「まあ俺は機関を抜ける際に、鬼神スキルで機関全員の記憶を消去しているから、こいつも憶えちゃいないだろうがな、貴様は全く俺のお荷物だったよ、飛鳥と違ってな。おい、憶えているか、雑用係!!」
松林が手を俺に当てた、軽く叩く感じで。
……確かに、思い出した、こいつは俺の元上司で、俺が小学生だった頃に、いじめまくった奴だ。