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卑怯

 「では、我々と友好関係になって頂けますでしょうか?」


 最後のトドメと言わんばかりに、一点の曇りもない華やかなスマイルで言い放った。そう言えば俺が友達になろうと誘おうとして、この場にやって来たって設定じゃなかったっけ。いつの間にか百鬼夜行への勧誘作業にシフトチェンジしている気がする。


 「……はい」


 参加理由がただのニート脱却か、この前の牡丹燈篭よりかは信頼に信憑性がありそうだが、大丈夫なのかよ。あそこまで精神的に追い詰めたのは俺なのだが。


 俺が烏天狗と契約した時は、あそこまでスムーズにはいかなかった。一か月は全く口も聞いて貰えなかったし、なかなか打ち解けてくれなかった。あの頃までの俺はまだこんな捻くれた性格ではなかった、だから毎日立ち入り禁止の奴の山に無断で登り、友達に会いに行っていた。

 妖怪は本来、人間の子供が大好きな習性のはずなのだが、奴に限ってはそんなこと全くなかった。俺の所属していた機関と一悶着起こしたくなかったという理由で、限度を超えた暴力だけはしてこなかったが、別にお菓子とかくれなかったし、会話してくれなかったし、すぐには友達にもなってくれなかった。


 あの頃の俺に明確に足らなかったのは、言語能力だろう。

 先ほどの、海坊主相手にこんなに短時間で説得出来たのは、俺が成長しある程度言葉というものを学んだからである。また相手の心を読み、何を言われたら具合が悪いかを、把握してしまう力が出来たからなのだ。


 俺は自分の言い訳や、デマカセを言うのは苦手だ。

 しかし、自分を包み隠さない分、相手の心の本質も見えてくる。


 しかしだ。これがあの頃に出来ていたなら……俺は烏天狗と友達になれていただろうか? こんな卑怯な方法で説得して真の絆がどこにあるのだろうか?

 しかも今の俺の行動はただ上からの命令に従っただけだ。俺の精神なんてどこにも入っていない。任務をこなしたといえば聞こえはいいが、所詮俺は海坊主のことをその程度にしか考えていないということになる。


 どんなに効率が悪くても、どんなに頭の悪い行動でも、それでも『友達になりたい』という一心だけで、頑張り続けたあの頃の方が……。


 「行弓君、大丈夫?」


 声がかかった、はっっとして声の方に振り向くと鶴見と追継が心配そうな目でみている。また、考え事をしてぼさっとしていたみたいだ。


 「大丈夫、なんでもないよ」


 「そうですか? お兄さん、ちょっと苦しそうですよ。朝から気になっていましたが、体調がすぐれないんじゃないんですか?」


 「いぃ……や。そんなことねぇよ」

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