坊主
「ぼっぼっぼ、またあなた方ですか、全く何が楽しくて我々に接近してくるんですか。正直迷惑なんですよ」
……なんという威圧感、丁寧な口調がより一層、威圧感を醸し出している。
声を出しているのは、先頭の一体だけだが、こうも数がいるとそれだけで心が押しつぶされそうになる。
「実は折り入ってお話がありまして」
まず隊長が先んじて話始めた。営業スマイルと、優しい口調で。
「私たちは百鬼夜行という陰陽師新機関です。元来の機関のスタイルを破り、妖怪と式神の契約を無き物とし、確かな絆と愛情を持って、悪霊を駆除していこうと思い結成したチームです」
「そんなことはそちらの御嬢さんから聞きましたよ、もう一人はいらっしゃらないようですが」
御嬢さんとは五百機さんのことだ、恐らく鶴見の方は変装により姿が分かっていないのだろう。妖怪の目も欺くとは、さすが本格派変態の仕事は違う。
「それで? 要件なんてどうせ式神になれって奴ですか? お断りしますよ、我々は忙しいんだ」
凄くきっぱりと断ってきたな、こちらの話なんて全く聞く気がないと思える。
「え? あぁ、いや。違いますよ。今日はそれとは違うお話でお伺いさせていただきました」
流石はリーダー、切り替えが早い。まずは関係ない話で興味を持たせて、そこから引き入れる作戦だな。心得ているな、ちゃんと想定の範囲内だったんだ。
「ぼっぼっぼ、違うお話とは?」
「はい、実は~」
そう言ってリーダーは、いきなり俺の方を両手で掴むと、思いっきり前に押し出した。
「ここにいる橇引行弓君が、皆さんとお友達になりたいということで」
驚いたのは言うまでもない。何が起こったか理解出来なかった。咄嗟に顔を海とは逆方向に変えて、リーダーや皆の方を向く。
おい、どういうことだよ。なぜ俺を矢面に出した?
思いっきり家族全員分の視線を背中から感じるのだが……。
リーダーに慌てて、念力を送る。
「リーダー、これはいったいどういうことですか」
「行け、最終兵器。あとは任せた」
つまり俺に頼る以外に、万策が尽きたってことかよ。つーか、何も交渉らしきことしてないじゃないか、完全に準備不足だよ、もうちょっと何か考えてこいよ。
リーダーは親指を立てて、グットラックのポーズをとった。
駄目だ、俺だって何も考えてなんかいないよ、こんなシチュエーションに放り込むつもりだったなら、事前に何か言っていて欲しかった。
仕方ない、泥船に乗った気持ちで頑張ろう。脳を振り絞るんだ。
「え、えっと。その頭かっこいいですね」
「喧嘩売ってんのかよ」
まずい。ファーストコンタクト、盛大に失敗。敬語は消え去り、どすのきいた怖い声が容赦なく俺を襲った。駄目だ。黙っていても、状況は悪化するだけだ。
「えっと先ほどお仕事が忙しいとおっしゃっておりましたが、普段は何をなされているんですか?」