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認識

車は二台あった。振り分けは鶴見と追継、もうひとつに俺、俺の教育係らしい五百機さん、そしてリーダーが乗り込んだ。


 会話は五百機さんとリーダーだけだった。なにやら真面目な内容だったので黙っていた。本当は全国の陰陽師を襲うことについてというテーマだったので、すごく話に参加したかったのだが、それどころではなかった。


 なぜなら、あいつの怒りが頂点に達したのである。


 「行弓ちゃん、まさか本当に百鬼夜行の駒になったのかな?」


 「あの……声のトーンが低すぎて本気で怖いんですけど」


 そう、俺の式神。火車さんがお怒りなんだ。それはもう酷く。


 「あっ、あの~。えっと、ごめんなさい」


 「ごめんなさいで状況が解決するなら式神はいりません!!」


 駄目だ、今どんな言い訳を並べたって、火車を納得させるだけの台詞を言えるとは思えねえ。元から言い訳とかかなり苦手だし。


 「私は始め、行弓が百鬼夜行から有益な情報を盗む為のスパイとして潜り込んだのだと思ってました。だからこの次点で危険すぎることに苛立っていました。なのに何ですか、先ほどの態度は!! 完全に仲間になっているじゃないですか!! 飛鳥さんもよつばさんも今頃呆れてますよ」


 うん、そう思われても仕方ないと自分でも思うよ。

 

 「行弓ちゃんは認識が甘いんですよ、毎回、毎回。行弓ちゃんは何も分かってないんです。どうしていつも認識が薄いんですか。既に百鬼夜行に襲われた陰陽師は多数います。奴らの掲げている妖怪と仲良くするって話だってどこまで信用できるか分かったもんじゃない。私は分かった、あの五百機とかいう女、私を利用してやろうって感じだった」


 「それはあの人が俺の教育係で、お前が俺の式神だから」

 

 「違う、私にははっきり分かる、百鬼夜行は信用出来ない。だって行弓が私と契約した時に、私は本物の愛情という物を感じた。私は直にその温かさに触れたんだ。彼らにはそれが感じられない。今までの陰陽師も、妖怪も、式神も、全て利用してやるっていう風に感じた。普通の陰陽師よりよっぽど悪意を感じた。まるで」


 「行弓君」


 その時だった、俺と火車の念力での会話が声により遮断された。俺を呼んだのは、リーダーである。その顔を俺はしっかりと見た。表面上は悪意なんて感じられない、しかしあんな話を聞くと、どうしてもあのスマイルに裏があるように感じてしまう。


 「……おぉ、成程。僕が怖くなったか、橇引行弓。そりゃそうだ、僕は君に名前も言わず、信念も言わず、正体すら隠している。そして、我々は全国の陰陽師を襲っていて、君の地元の人間の全てを爆死させようなんてした悪党だ。そんな集団のトップに半強制的に仲間にされて、平常心を保てる訳がない。今まで良く、それとなく耐えていたよ。だが、やはりこう面と向かってシリアスな話になるとやはり気まずいみたいだね。因みに僕も君と同じくらい動揺している」


 ……何言ってんだ、この女。


 「だから勘違いを解く為に一ついい情報を漏らしてあげよう。君がもしスパイとして潜り込んでいるつもりなら、誰にでも話すといい。そうでなく我々の仲間であると思ってくれているなら、これは絶対に忘れないでほしい」


 彼女はにっこりと笑った。


 「私はどんな時でも君の味方だよ」

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