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百鬼夜行のリーダー、一体どんな人物なのだろうか?
改めて想像してみるけど、思いつかない。そもそも一団をまとめ上げる能力とは、どういった具合に備わっていればよいのだろうか?
俺の部屋を出て、廊下を歩く追継と、五百機さん。俺が並んで歩く様を、おっとりと追いかける。二人は念力で何か話しているようだ。表情からしてそこまでそんな真剣な話のようには聞こえないが、これからの俺の仕事の内容とかだろうか。
頭が冴えない、三日も寝ていたからだろうか、それとも不本意に百鬼夜行に入隊したからだろうか。……いや、違うな。
俺が今から百鬼夜行のリーダーとやらと顔合わせをせねばならないのが、嫌だからだ。間違いない、頭が冴えないんじゃない、精神的ストレスを感じているからだ。嫌だなぁ、会いたくねえ、心から。
「どうした行弓、嫌そうな顔をして」
振り向いて俺に方を向いた追継が、不意に聞いてきた。
「いや何ていうか、百鬼夜行の団長さんって、一体何者なんですかね?」
…………。しばらくの間、三人の間に沈黙が走る。追継も五百機さんも下を向いて、何か困った表情をしている。ようやく口を開いたかと思いきや、低いトーンになって五百機さんが言った。
「まぁ、何というか、変態だ」
「……へぇ」
変態か、それは全くノーマークだったな。変態なんて現実世界にそう何人もいないと思うのだが、まさかさっき同様の冗談なのだろうか。いやでも、追継も五百機さんと同様のなにかまずい顔をしているところからして、……冗談じゃないな。
だが、変態という生物にだって種類というものがあるだろう。そいつは一体どういった変態さんなのか。
「行弓。もし団長は変態だけども、仕事自体は真面目にする人だ。人を見かけで判断しないで欲しい。だから団長を見て、一時間は我慢して、耐えて欲しい」
おいおい、まじで何者なんだよ。むしろ会ってみたくなってきたわ!!
「あぁ、えっと。五十鈴、行弓。到着したぞ。鶴見牡丹の部屋に」
え? 鶴見の部屋? いや、そうか。リーダーは今、鶴見の部屋にいる訳だったな。
「さて、何て言おうかな」
正直思いつかない、俺はついこの前まで、百鬼夜行の存在に反対だった。その件については、奴だって知っているはずだろう。昔の追継の話からして、奴は俺を尊敬していると聞いているが、正直今は幻滅ともしていると考えられる。俺のイメージはマイナスのはずだ。
「始めのあいさつが重要だな、やっぱり」
ワザと声にだし、自分に言い聞かせる。俺は逃げない、百鬼夜行のリーダーごときにびくついてたまるか。
そう思い、ドアに一番に手を付けて引こうとしたとき、何やら部屋の中から変な声が聞こえ、俺は手を止めた。