寸前
「そうか、とうとうお前も陰陽師になったか。わしはお前に、それにだけはなって欲しくなかった。」
だろうよ、お前の敵になったって、アピールしているものだからな。
「頼む、もう俺はお前の思っているほど、子供じゃないんだ。俺がこの場であの爆発を止めに行かなかったら、俺はいつまでたっても子供のままだ。責任感の無い、ただの陰陽師もどきのままだ。俺は、特に何もしない陰陽師って自分のことを、思っている。でもそれは、何もしないニートってことじゃない。頑張る時に、頑張る。やる時に、やる。そういう、カッコいい男になりたい。俺は役立たずで、解雇処分を受けて、落ち毀れの烙印を押された、屑だ。だからこそ、こういう時に何かをすることこそ、誰かを助けることこそ、特に何もしない陰陽師だ」
烏天狗は、すぐには答えを返してはくれなかった。腕を組み、首を曲げ、深く考えているように、下を向いた。そして、俺の目を向きこう言った。
「お前の戦いたい理由は、理解出来た。しかし、わしが手伝う理由が述べられていないようなのじゃが」
「そんなの言う必要ないよ。俺はお前の友達だ。だからお前は、俺に協力して貰う。だって、友達を惜しみなく頼るのは、当然だろ。依頼じゃねえ、命令でもない。これは俺の友達に対するお願いだ。友達同士の関係に遠慮はいらねえ」
「お前、最悪じゃな。性格までひね曲がったか」
「それだけお前を友達だと思っているんだよ、烏天狗」
もういいだろう、これ以上は無駄な時間を裂けない、そう思いあの爆発寸前の化け物を見た。さてと、こうなったら勢いだ。
「謝罪なら後でする。俺も結構、ぎりぎりの妖力しか残ってなくてな。俺に供給する必要なんてないから、あの怪物を目掛けて思いっきり叩き込んでくれ」
「おい、まだやるなんて一言も」
「だから、後だって言ってんだろ、もう破裂寸前なんだよ、この時間が勿体ないんだ」
この爆発を止める方法はもう俺達には無い。だが、被害を出さずに、この被害を解決する方法がある。爆発が止められないなら、爆風を撒き散らせばいい。被害の無いであろう上空に、それも出来る限り等間隔に。
確かに、あの提灯の中に入っている妖力の塊は、捕獲不能レベルの絶大的エネルギーがある。しかし、言ってしまえば、ただの自爆。そこに、細かい計算や、システムが無い。そもそも提灯お化け自体は、ただの妖怪であり、鶴見牡丹自体も、ただの一般的な陰陽師である。闘いから、身を引いた牡丹燈篭のパワーが全て順応するとは、思えない。
変わってこちらの烏天狗も、牡丹燈篭と同じ紛れもない捕獲不能レベルの妖怪だ。俺など関与しなければ、そんじょそこらの、妖怪じゃ束になっても敵わないほどの、実力があるのだ。しかも、まだ戦闘を行なっていない為に、妖力のストックはマックスにある。
あとはテクニックの問題だ。




