救済
俺は何をしているのだろう。いや、一体何者だったのだろう。
こんなバットエンドが俺の納得した結果なのだとしたら、俺はヒーローでもなく、英雄でもなく、正義の味方でもない。じゃあ、一体俺はなんだったのか。決まっている、特に何もしない陰陽師だ。
だって、実際に何もしていないから。
「行弓君!! 行弓君!! 前方から何者かが全速力でこっちに向かってきます」
急な飛鳥の叫びに、俺はびっくりした。一体何が、この上空にやってくるというのだろうか。
「あ、あれじゃ!!」
そこには、……あいつがいた。俺の知り合いが。
「何でお前がここにいるんだよ。振払追継」
そこには、狐耳のフードを被った、小柄な女の子が自動車サイズの狐に乗って、雨空の天空を走っていた。こっちを見ている。気づかれているな、そんなことは、どうでもいい。なぜ、こんなところに奴が。仲間の死体を待ちかえりたいとか、そんな理由だろうか。鶴見牡丹の。
「追継さん……」
飛鳥も驚いたような声をあげる。誰か分からないよつばのみが、キョトンとしていた。俺達の目の前まで来ると、狐が動きを止めた。
「こんばんわ、お兄さん、お姉さん。私の仲間がお騒がせしています」
「そんなレベルじゃねーよ、今から何が行われるか分かってんのか?」
「……鶴見牡丹があの奥義をした、ということは……牡丹燈篭が敗北したのか、あれほどの妖怪を一体誰が」
「俺だよ、俺が倒した」
そして、何が奥義だ、ただの迷惑な爆発じゃねーか。
「……追継さん。あなたがここに来てくれた。ということは、あの爆発を止めに来てくれたのですか?」
「いや、無茶いうな。私の属性も火だから、妖術はおよそ効かない。私には無理だ」
「じゃあ、やはり鶴見牡丹の死亡確認や今回の戦闘の記録とかですか?」
追継は何も答えず、ただ右ポケットをごそごそと触る。何だ、一体? まさか、俺達三人とここで戦闘する気じゃないよな。冗談だろう、俺と飛鳥は先ほどまでの戦闘と、この飛行の為に妖力はほぼ無い。よつば一人に戦わせるには、荷が重すぎる相手だ。一体何をするつもりなんだ。
「安心して下さい。警戒しなくても、私は前回同様、交渉しに来ただけ何ですよ」
そう言うと、ようやくポケットから手を離し、とあるお札を一枚、俺の方に向けた。それは……。
「そうです、お兄さんの昔の……相棒ですよ」