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黒魂

 「そんな気まずい顔しないで下さい、お気持ちは分かりますよ。貴方にだけ言っておきますが、私もまた全く同じ理由で動いているのですよ。勿論、依頼主は違いますが」


 えぇっ、これは驚きだ。てっきりよつばにチクるつもりだと思っていた。


 「誰だよ、その依頼主ってのは」


 「旦那様です」


 飛鳥の言った旦那様というのは御上のことを表す。


 「あの男が自ら進んで娘の邪魔をするとは、到底思えないな」


 「娘を愛しているからこその判断なのです。旦那様はよつば様のおっしゃることを正面から否定することをかなり苦手としております。今回の件もそうです、本当は妖怪を一般の方々に晒すなどあってはならない話です。しかし、よつば様の発言に駄目だと言えなかったのです。そして私にさり気なく火車の捕獲に失敗してこいとご命令されたのです」


 あいつらしい判断だな。御上は俺とは違い、妖怪の為ではなく、人間の為に行動したのだ。正確には命令しただけなのだけど。飛鳥が可哀想だよ、こんな人でなしの旦那様を持って。


 「父親の方にはそのくらいの常識はあったか。てっきり、娘可愛さに了承しているのかと思っていたぜ」


 「行弓君、私の前で旦那様の悪口は止めて下さい」


 あいよっと、心の中だけにしときますよ。飛鳥がどうしてあんな男に忠誠を誓えるのか俺にはさっぱり分からない。まあでもよつばの作戦を一人で邪魔するのは、かなり不安があった。飛鳥も一緒ならかなり助かる。


 「まあ協力し合いましょうかね、楽ではないだろうし」


 「あぁ、宜しく頼むぜ」

 

 と、念力による作戦会議の終了と共に霊道に到着した。多くの亡くなった人の青く光る魂が縦一列に行進している、あの世に向かっているのだ。そしてその中に赤い魂が混ざっている。前世に悪行を働いた者の魂だ。火車はこの赤い魂のみを地獄へと運ぶことになっている。因みにこの赤い魂が現界に来ると悪霊化し、人々を襲い始める。それを防ぐ為に我々、陰陽師が存在するのだ。


 しかし、元悪人の魂などたかが知れている。本当に怖いのは前世に強大な恨みを残している霊の思念。青くもなく、赤くもなく、真っ黒に燃える魂。俺のような下っ端では一度しか遭遇したことのない、あの小学生の頃に人手不足になった原因である。



 「おった、おった!! 火車じゃーー、前輪と後輪。合わせて二匹は捕まえるぞー」


 何っ、しまった!! ぼさっとしていたら、よつばが先に火車を見つけてしまった。


 「よつば!! 待て!! いきなり駆け寄るな!!」


 「よつば様、落ち着いて下さい!!」


 俺と飛鳥の声を無視して、悪人の魂を運ぼうとする六匹で行動している群れにダッシュで近づいていくよつば。大声を出すもんだから当然、気づかれてしまった。

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