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牡丹

二日休んですいませんでした

 鶴見はあらかじめ大量の妖力を、牡丹燈篭から譲り受けていた。だから、牡丹燈篭を他の場所に放置しても、ある程度余裕があった。だからといって、鶴見自身にもストック出来る限度ってものがある。牡丹燈篭からの妖力供給が完全に断たれたのなら、あとは底が着くまで戦うしかない。だから、御上ら五人はその残りの妖力の、消費の役割を果たし、やっと飛鳥がここまで追い詰めた。


 だが、俺のここまでの推測は間違っていなくとも、大きな見落としがあった。それは、もう一体の式神である。俺は鶴見が提灯お化けの存在を、どう認識しているのかを考えなかった。昔からの式神だから、ただの手駒として、威圧感を出すために並べただけ、頭の中でなんの確証も無いのに、そういう理由だと決めつけて処理していたのである。


 「もう一体は貯蔵器だったのか」


 さっきも説明したが、鶴見は牡丹燈篭から、通常の何倍もの妖力を供給している。しかし、基本スペックが普通の鶴見牡丹がその全ての妖力を貰えるはずがない。貰ったって、俺が牡丹燈篭の妖力を吸収した際に、火車に分け与えられず、全て体から垂れ流したのと同様の状態に陥るだけだ。

 だが、なぜそうならなかった? 鶴見は、どうして牡丹燈篭の妖力を余すことなく、使用出来た?


 答えは、そこのもう一体の式神だ。つまり、俺が火車に妖力を分担するように、奴も提灯お化けに妖力を分け与えていたのである。ただし、目的は提灯お化け自体の強化ではなく、妖力をいつでも問題なく使用する為の貯蔵庫として。


 「だが、提灯お化けの中にある妖力のストックも底を着こうとした。だから、残りの妖力を振り絞って、自爆って訳か。あーね、ようやく合点がいったぜ」


 で? どうする? 今すぐ、鶴見もしくは提灯野郎に特攻すれば、その時点で爆発する。被害は最大級にはならないかもしれないが、俺は勿論、ここにいる人間は皆死ぬな、鶴見も。


 「止めろよ、鶴見!! 俺はお前を殺すつもりなんてないんだ。百鬼夜行と縁を切ってくれれば、それでいいんだよ!! おい、聞いているのか!!」

 

 「止めとけ」


 左手に俺とさっきまで通信に使用していた携帯電話を持ちながら、苦しそうに地面に倒れている御上が俺にそう呟いた。


 「あいつをよく見てみろ」


 一反木綿に吊るされている、鶴見牡丹。だが、その目は全く開かず、首も下を向いたまま動かない。


 「死んでる!?」


 「気絶してんだよ、馬鹿!! ったく。飛鳥、ちょっと来い」


 その声がする頃には既に俺の傍にいた。こんな絶望的な状況でも表情を一切変えてない。いつもの、ぼんやりフェイスだ。これでこそ、日野内飛鳥だ。


 「取り敢えず、何もかも間に合わねえ。しゃーないから」


 「おい、寝ぼけてる場合か。とっとと、住民に避難警告を出して、この場から」


 「……あぁ、お前はまだ知らないままだったのか。説明している暇は無い。飛鳥、いつもの打ち合わせ通りだ。手筈通りやれ」


 「はい、かしこまりました。旦那様。橇引行弓は?」


 「連れて行けよ、そこまで知るか」


 「了解しました。それでは」


 おいおい、さっきから何を話ているんだよ。早く、この爆発を止める方法を皆で考えなきゃ。


 「行きますよ、行弓君。今から、急いでよつば様を迎えに行き、三人でこの町を脱出します」


 この言葉を言い切る前に、俺は後ろから黒い一反木綿に巻き付かれていた。いつの間にか、鶴見を拘束していた奴はいなくなっていて、鶴見は地面に捨てられている。


 「待てよ、何を言っているんだ!!」


 「だから……この町を諦めると言っています」

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