霊界
つー訳で霊界である。えっ、そんなに簡単に行けるものなの? 子供だけで? と、思った人、実は行けるのである。ほら、我々って陰陽師だし。行けちゃうんです、はい。
よし、霊界について説明しよう。まず、風景としては時代劇などの日本の古き良い町なみを思い出して欲しい、当然夜のように真っ暗だ。しかし、あたりの家に提灯が翳してあり全く何も見えない訳ではない。太陽などは存在しない、あるのは美しいおぼろ月。
そこに住まうは妖怪達。でもまあ、こんな何もない地点では一般的な鬼くらいしかいない。みんな割とだらけている。昼寝したり、酒を飲んでたり、ぼーっと空を眺めたり。平和な妖怪の日常なのだろう。
しかし、俺達の姿を確認した瞬間に、まるで激しい電撃が走ったかのように、全員が一斉に俺達に向かって背を向けた。そして、悲鳴と共に皆で走り出した。
「うわあぁぁぁぁぁぁ、陰陽師だあぁぁぁぁぁぁ」
「逃げろおぉぉぉぉぉ、式神にさせられるぞおぉぉぉぉぉ」
泣きながら走り続ける皆さん。あっ、今デブがこけた。その鬼に足が引っ掛かって、次々に転がっていく。見ているこっちとしては悲惨以外の何物でもない。この光景を見て楽しそうに扇で自分を扇ぐよつばとうっすらと希薄な目で眺める飛鳥。心の中でなんかすいませんと謝罪をする俺であった。
で、本題である。
「それでどうやって火車を探すつもりだよ」
「勿論、大丈夫じゃ」
そう言うと、何やら怪しげな機械を取り出した。手のひらサイズで画面が大きい。
「この妖怪レーダーさえあればどんな種類の妖怪だろうと一瞬で居場所が分かるのじゃ」
俺が言うのもあれだが随分と陰陽師らしくないアイテムだよな、それ。
「え~と、火車のいる場所はっと。あれ? 既に一匹近くにおる」
しまった!! 俺のポケットの中にいる火車がレーダーに反応したのか。
「いやいや、いないだろ、そんな奴。レーダーが間違って点滅しているだけだぜ、故障だよ故障」
「確かにおらんのう、今日はレーダーの調子が悪いようじゃ」
「そうだな、調子が悪いようだ」
よし、なんとか誤魔化したぞ。助かった。
「まあレーダーに頼らずともまだ手はある。あの世への道、霊道へ向かうぞ。きっとそこに悪人の魂を運ぶ火車がいるはずじゃ」
そこを襲うってことは完全に職業妨害だな。まあ、俺がさせないけど。
霊道に向かう道中に飛鳥が念力を送ってきた。
「行弓君、火車の式神が手持ちにありますよね。ズボンの右ポケットでしょうか」
やはり、飛鳥にはバレていたか。よつばとは違いこの人は騙せないだろうと思っていた。
「俺に式神はいない、ただお札の中に入ってもらっているだけだ」
「恐らく、よつば様に協力しに来たのではなく、邪魔しに来たのでしょう。その妖怪から頼まれて」
流石すぎるな天才児。俺の計画はもう全てバレている。