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仮想

 そもそもである。俺と鶴見がまともに戦ったって、結果は見えている。

 俺は万年、最弱の落ち毀れ陰陽師。五行の全ての属性を持つことで、一般の陰陽師の半分の妖力も持っていない。それどころか、バトルセンスはない、経験値もない。鬼神スキルもたった三つ。切り札の妖力吸収も相手と接触しなければ発動しない条件着き。


 鶴見牡丹は自分では、普通の陰陽師だとか、百鬼夜行最弱だとか、言っていた。だが実際は討伐隊の連中を返り討ちに出来るほどの実力がある。

 真っ当に戦って、俺の勝利出来る確率なんてまずゼロと考えておくのが妥当だろう。

 ……だから、真っ当になんか戦わない、そして俺はこんなチャンスを絶対に無駄にしない。


 俺に何の呪縛を掛けたのか知らないが、その為に式神を俺に接触させたのは間違いだったな。無理もない、俺が他人の妖力を吸収するという裏技を持っているなど、振払追継は知らないのだから。残念だったな、遠距離だけで戦うのは良くないが、接近して闘いすぎも良くないんだぜ!!


 「よっしゃあ」


 俺は取り敢えず、この間と同じ戦車を頭にイメージした。お札からさらに五体ほど多くの火車を召喚する。このまま一気に砲撃で仕留める。

 見事鶴見の式神は元の骸骨の姿に戻っていき、戦車は何の問題もなく完成する。ちょっと完成したらどんな姿になっていたか興味があるが、今はそんなこと言ってられない。


 骸骨がそのまま地面に落ちる。さっきの真剣白刃取りの時は凄まじいパワーだったのに、随分とあっけなかったな。だがまだ式神はもう一体いる。早く追いつかなくては。

 

 今度は戦車の上に乗り、進撃する。スピードはさっきのバイクと対して変わらない。追いつくか分からないが、間に合ってくれ。

 

 「どこに行くんです? 行弓様?」

 

 ……? 今の声は鶴見じゃない。……まさか……。そう俺の後ろのは骸骨が立っていた。

 何で妖力を全て抜き去ってやったのに動けるんだ、この骸骨さんは? 

 

 「ひどいじゃないですか、行弓様。わたくしを置いて、どこかへ行ってしまうなんて」


 いや、ひどいのはお前の存在だろ、怖すぎるわ。しかもいつの間にかよく分からない霧が、俺と骸骨を包んでいく。おいおい、何なんだよ、一体。毒霧か何かだろうか、吸い込んで大丈夫じゃないかもしれない。慌てて、胸のポケットにあるハンカチで鼻と口を覆う。意味はないかもしれないが。

 

 「どうかなさいました、行弓様。お気分でも悪うございますか」


 本当に心配しているこのような声のトーンで、話かけてくる骸骨。いや、待て。またこいつ受肉を始めたぞ!! それは別に筋肉だの血管だのが浮き出てくる訳ではなく、足の方から霧が晴れるかのように変わっていく。

 

 「お待ちしておりました、行弓様」


 そこには……先ほどの骸骨の羽織っていた着物を着た、声の全く違う……日野内飛鳥がそこにいた。


 「誰だよ、お前」


 この時に俺はようやく気付いた。鶴見の罠にまんまと掛かったことに。

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