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骸骨

 俺はバイクに飛び乗ると、すぐに二体の妖怪を追おうと思った。あんな卑怯な戦い方をする奴を、庇う気にはならないが、黙って指を銜えて眺めているのも、嫌だ。だってもう俺は逃げないと決めた。今の状況がどうであれ、もし誰かが襲われそうなら助けに行かなくては。

 だが、はっとなった。俺はこのバイクに鶴見を乗せていくべきだろうか。やはり鶴見としても、あの二体と出来るだけ近ずくほうが、指示もしやすいし、防御面でも良いはずだ。今から交戦する相手の本体に、有意になる施しをしてはいけない。だが俺はまだ明確に鶴見にお前と戦うとは言っていない。さっき胸を負傷のことで、俺の心の中に下手な同情が生まれてしまった。正直、闘いづらい。

 だが鶴見は、そんな俺を見て、俺の心情を見透かしたのか、笑って言った。

 

 「いいよ、じゃあ行弓君。今から競争ね」


 それは、俺と鶴見のどっちが先に、討伐隊の連中に追いつくか、という競争だろうか。

 それとも、俺が先に守れるか、鶴見が先に仕留めるか。そういう競争か。

 どちらにしても、俺にこれ以上ゆっくりしている暇はない。


 「前の二体を追うぞ。全速力で走ってくれ」


 鶴見を道路に残し、俺だけ走り去った。毎日、あの施設の訓練場で修行しながら乗り回している為に、ドライブテクニックには自信がある。何より、下のバイクはただの鉄の塊じゃない。俺の相棒だ。ただ空を飛行している骸骨と提灯にスピードで負けてたまるか。

 その時である。なんと骸骨はこっちを振り向き、後ろへ旋回してきやがった。間近で見ると本当に怖い。

 そんな恐怖を抑え、目を凝らし観察してみる。牡丹燈篭とか言いがったか。俺でも知らないぞ、そんな妖怪。特に武器みたいな物は持っていないが、頭の簪でも使うつもりだろうか。

 

 「行くぜ、鬼神スキル蓮柱」


 ポケットから用意していたお札の何枚かを固め、剣を作る。そして、丁度ぶつかりそうになった時に、ハンドルから手を離し、振り被った。よっしゃ、当たっ……ってねぇ。まさか、信じられない。あの女性用の着物を着た骸骨さん。驚くことに、俺の剣を……真剣白刃取りしやがった。ありえねぇ、確かに俺の戦歴において、蓮柱が役にたったためしなどないのだが、他にまともな戦術がない為に取り敢えず毎回使ってきた。だから、実践などほぼ無い俺の中で一経験値が高く、歴史の長い武器だ。だからこそ、この蓮柱は色んな連中に無力化されてきた。しかし真剣白刃取りで防御されたのは初めてだ。しかも骸骨に。

 力を振り絞って、全力で振り下ろすがびくともしない。やっぱり俺一人の妖力じゃ駄目だ。


 骸骨をくっ付けながらそのまま直進するバイク。やばい、前が見えない。ハンドルを握ってない状態でも、下が式神なので、バランスを失い転げる心配だけはないのだが、前が見えないのはまずい。


 あの骸骨、やっと剣を放したかと思えば、一瞬の隙を見て、俺に抱き着きやがった。何だよ、寝技でもかけるつもりかよ。だが、ぶら下がるだけで骸骨は何もしてこない。むしろ肩の上から前が見えて、助かったくらいだ。しかし、ここで終わるはずがない。今度は骸骨が突然変異を始めた。なんと、骸骨の姿が足の方から人間に変わっていくではないか。何だこれ、気持ち悪い。


 遠くから鶴見の声がうっすらと聞こえた。


 「呪縛スタート」

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