攻撃
追加攻撃は来ない、だが鶴見の受けたダメージは、致命的だった。出血が止まらない、体育に使用する為に持ってきていたタオルで、一応押さえているが、どうも血が止まるとは思えない。まず安全な場所に逃がしたいのだが、相手がどこから攻撃しているのか分からない以上、どこが安全でどこが安全じゃないのか分からない。そして俺は回復系の鬼神スキルを一切持っていない。救急車を呼ばなくては。そう思い、慌てて携帯電話をポケットから取り出す。
そんな俺の手を、鶴見が止めた。
「駄目だよ、一般人に迷惑を掛けたら」
「そんなこと言っている場合か、俺にはお前を回復させる手段なんてないんだよ」
「大丈夫だよ、私自身が持っているから、それよりも相手は一体誰で、どこから攻撃してきたのか考えよう」
何を悠長な、と思うがトドメをさそうと、攻撃を追加してこないのはおかしい。
まず、百鬼夜行の残りの連中だが、攻撃してきたとは考えられない。鶴見は俺を誘う仕事をサボらずしっかり行っていた、そして俺はまだ入隊をしっかり断った訳ではない。だからあの段階で、攻撃するのはどうもしっくりこない。
なら御上などの内の連中か、いや少なくとも俺の知り合いじゃないと思う。だって俺が妖力を持っているが、陰陽師じゃないということを知っている。つまり俺は一般人と同じ扱いなのだ、不本意ながら。俺が陰陽師を止めたってのは、ここの地元じゃかなり有名な話だ。御上だったら最大限、俺を巻き込まないように鶴見を攻撃しているだろう。だからうちの連中じゃない。
「討伐隊だ、間違いねぇ」
俺は一般人扱いとなっている、だが妖力を持っているのが原因で、初対面の人には俺が陰陽師かどうかなんて、判別出来ない。だから攻撃してもなんら遜色は無い、だって隣にいる俺も陰陽師なのだから。
「まあ、襲われるのは、これが初めてじゃないよ。はー、油断したな」
自分の妖力で傷に手を当て、回復する鶴見。出血は治まり、だんだん傷が消えていく。
「じゃあそろそろ反撃しますか」
「待て、まだ傷が。いやそれ以前に敵の位置が分かるのかよ」
「うん、だって今、あいつ等が攻撃してこないのは、自分たちのいる位置を私に正確に把握して欲しくないからだから。実はだいたい目星は着いたけどね」