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梅雨

 鶴見牡丹は百鬼夜行の陰陽師だ、俺の最大の敵と言っても過言ではない。しかし、俺は紳士である。女性が困っているのに、見て見ぬふりをすることなど、到底出来ない。取り敢えず黙って中に入れてやった。


 奴も黙って一礼だけすると、ゆっくり俺の傘の中に入った。そういえば、この感覚は初めてではない。誰かとあいあい傘なることをするのは。母親や、祖父。あとは、飛鳥ともしたことがあったな。まだ陰陽師になったばっかりの時である。あの頃は仲が良かったな。飛鳥との関係はすぐ壊れたが。俺が駄目人間になったのが原因か、飛鳥があまりに早く大人になってしまったのが原因か。まあ、どっちもだろう。


 「梅雨って嫌何だよね。雨の日がずっと続くのも嫌だし、可愛くない小動物がいっぱい増えるし、じめじめするし。本当に嫌だよね。でもさぁ、男の子的にはどうなのかな」


 何ごともなかったかのような口ぶりで、話掛けてくる牡丹。鞄を左手に持ち、右手を使って顔のあたりを扇いでいる。確かに今日は、天候の割に暑い。


 「おい、傘に入るのは構わないが、お前の家を俺は知らないぞ。家まで送っていくから、道を教えろよ」


 いやいや、逃がしちゃ駄目だろ、俺。


 「ん? 大丈夫。傘を忘れてきたのは本当なんだけど、別に家に帰りたくて、接近した訳じゃないから。ほら、君と私はあれなんだから。ちゃんとお話ししないとね」


 その”あれ”というのは、陰陽師という単語が入るのだろう。確かに俺もお前とはしっかり話さなきゃいけないことがある。今後、いつ戦うとか。百鬼夜行の他のメンバーの情報とか。妖怪を解放する作業の真意とか。


 「で、男の子的に梅雨はどうなのかな」


 あれ? 何だってそんな変なところに食い付いているんだ、この女?

 気づくと先ほどまで、平手にし扇の用途で使用していた右腕が、胸の辺りに。そして……。


 「馬鹿!! 止めろ、紳士の前でなんてことをしているんだ。その…見えてしまうだろ!!」

 

 「だからさあ、男の子って、皆梅雨が大好き何だよね、きっと。だって女の子が程よく濡れてくれるから」

 

 「そんな貧弱な誘惑では、真の紳士はうろたえない!!」


 あれ、何馬鹿みたいなこと言ってんの、俺。


 「橇引行弓、率直に聞く」


 すると、鶴見は急に声のトーンを落とし、真剣な顔つきになった。よし、ようやく本題に入るという訳か。


 「梅雨が大好きか?」


 まだそのネタが続くのかよ!!

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