捕獲
「そこでうちは考えた、ここは陰陽師らしく、逃げるならば追い回し追い詰め捕獲すればよいと」
この娘、本当に自分以外がどうなろうと構わないって感じだな。どんな教育されてやがる。
ん? ちょっと待て。
「おい、よつば。もしかして依頼って」
「もちろん、霊界に行って火車を捕獲するのを手伝え、じゃ」
俺はむしろ火車共を守りに来た訳なのだが、さてどうすべきか。
この娘のテンションからして、作戦中止させるのは極めて困難。力づくでの説得も無理だ。俺は紳士だから女性に暴力なんて出来ない。別にさっきから白い目で俺をぼんやりと眺めている日野内さんが恐いとかそんなんじゃない。俺は紳士だからだ。
ならどうやって説得すべきか……下手に反発するよりもいかにも仲間頭して一緒に同行し、ワザと足を引っ張って妨害し、火車を逃がす方が戦略としては現実的だな。陰陽師の落ちこぼれである俺にはぴったりの作戦だ。
「よし、分かった。いいだろう。折角、ここまで来たんだし、久しぶりに遊んでやろう」
「本当か!! わーい、ありがとう、行弓。だーい嫌い」
そこは大好きって単語が入るんじゃないのか……。
「良かったじゃないですか、サンドバック男子。罵られて」
ちっとも嬉しくないんですけど、それとまだそのネタを続けるつもりか。
と、二人に構っていると、ポケットから声が微かに声が聞こえた。
「ちょっと行弓ちゃん!? 何してくれてるの!?」
あっ、完全に忘れてた。お札の中にいる火車に念力を送る。
「大丈夫だ、俺があいつらの邪魔をして時間を稼ぐから、その隙にお札から飛び出して仲間を連れて逃げろ」
「えぇ、でも行弓ちゃんが」
まあ、一か月自転車の刑とか、一か月サンドバックの刑とか想像するだけで泣きたくなってきたが、友達の為だ、仕方がない。
「いいんだよ、俺もなんとかして逃げるから」
多分、無駄な抵抗で終わる気がするが。
「ありがとう、仲間を逃がし終わったら必ず助けに戻って来るよ」
「来なくていい、お前まで捕まるだけだ」
よく考えてみると、飛鳥は宵氷のスキルを所持している以上、俺に逃げ切れる可能性なんかない。
「独り言ですか、気持ち悪い」
「悪かったな……」
「油を売っている暇はないのじゃ。飛鳥よ、準備してくれ」
「はい、かしこまりました。少々離れていて下さい」
そう言うと、俺の持っている物とは別の模様のお札を袖から取り出した。霊界の道を開くのだ、次第に飛鳥の周りの地面に結界陣が広がっていく。俺も出来ないことはないが、急いでも三十分はかかるのに、飛鳥はそれを僅か5分くらいで完成させた。やはり日頃から訓練している陰陽師は違う。
「準備が整いました、よつば様」
「うむ、では行くぞ。妖怪狩りじゃー」
何、その掛け声!? と思いつつ、二人を追う俺であった。
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