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脅迫

 軽い精神的ショックを抱えたまま、とぼとぼと階段を下りる。そりゃ御上の言い分を全く分からないほど、もう子供じゃないのだが、それを差し引いたとしても、この仕打ちはあんまりだろう。確かに俺は機関にとって迷惑な存在だったかも知れない。だがそれなりに真剣し仕事には取り組んでいたつもりだし、出来もしない無理難題を押し付けたのも、事実だろう。それを俺だけが悪いみたいにしやがって。俺に囮になれとか言っていたが、思いっきり敵に侵入されておいて、何を偉そうに。非常に不愉快だ。


 止めよう、あいつ等の嫌味を考えるのは後回しだ。囮なんて引き受けるつもりはないが、俺は俺で百鬼夜行のそいつと戦う覚悟がある。したがって心構えが必要だ。


 そういえば今日、うちのクラスに転校生が来るって騒いでいたな。女子っていう点が共通しているが、さてどうなのだろう。仮にその転校生が百鬼夜行の構成員だったとして、俺は奴を警戒しなければならない。恐らく敵も一般人に戦闘を目撃されるのは嫌なはずだ。だから戦闘になるのは、俺と奴が二人になった瞬間である。いや、この前の追継みたいに、鬼神スキル「舞酒」などの周辺攪乱能力でいっきに勝負を決めてくるかもしれない。それとも、匠な交渉術で俺を騙し、仲間に勧誘してくる可能性もある。一瞬たりとも気が抜けない。引き締めてかからねば。かかってこいや、百鬼夜行。そう思い、教室の扉を開けた。


 「橇引氏、一体どちらへ」


 「屋上で知り合いと電話していた」


 「そうでしたか、間に合って良かった。朝礼が始まります」


 もうそんな時間か、随分と御上と会話をしてしまった。


 「あぁ、すまん。すぐに席に座るよ」


 俺が指定に席に着いたその時だった。クラス担任と一緒に女の子が教室に入ってくる。

 髪は薄い桃色で、小柄な体格をしている。目が大きく顔は整っているが、どこか幼さを感じる。なのに胸が大きい、まさかこれが世間で噂されるロリ巨乳なるものではないか……いかん、いかん。あいつは怪しい奴、筆頭候補だった、あいつに対し気の緩みは許されない。

 なにより思いっきり怪しい。入ってからずっと、あからさまに俺の方も見てにやけている、可愛らしく微笑んでいるつもりなのだろうが、俺にとっては、ただの恐怖だ。


 だが、奴は俺のこれまでの緊張をいっそ無にするほどすがすがしく自分が陰陽師だって告白した。

 突然転校生は、俺に向かって大きく手を上空に振り、大きな声で言った。


 「行弓くーん。さらいに来たよぉ」


 呆れを通り越し、なんか今までの気合いが、もう何もかも頭から消えていった。最後に残ったのは恐怖だけである。

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