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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
Another final
444/462

気前

自分の仕出かした行動には責任を持たなければならない。不始末は自分で拭わなくてはならない。なぜ陰陽師が一般人に危害が加わるのを嫌がるのか。それは二次被害を避ける為にある。悪霊を消すのが陰陽師の仕事だが、悪霊を量産しない事も陰陽師の仕事だ。『怨み』や『怨念』の類を増やさない事で、悪霊の増加を阻止している。


 だからこそ、この状況が極めて『自業自得』な光景なのである。規則を無視して、ルールを破って、これで悪霊の精神を逆撫でしたというのなら、呆れを通り越して、もう馬鹿丸出しだ。


 「殺しませんよ、あなたには洗い浚い吐いて貰う。君に彼女を捉えておくように命令した人間、あの事件に関わっていた人間。それらを全てな……」


 「俺は事件が片付いた後に呼ばれた人間だ、理事長に封印するように協力を依頼されただけで、俺はあんまり事件について知らないんだ。あれは過激派の連中が……あれ?」


 待てよ? 何かが引っ掛かった。いま……何かの違和感を感じた。


 「確かに緑画高校の理事長は君よりも有力な情報を持っていそうだね。しかし……、事件後の関係者と主張するのはいかがかな? 殺せなんて気前のいい台詞を言って、結局は責任逃れをしたいようにしか感じないんだけど」


 違う、今の俺の言った事は真実だ。俺は柵野栄助がレベル3の悪霊だとか、奴が人間としての被害者だったとか。そんな概要は知らなかったのだ。特殊な悪霊だとは思っていたが、進化系なんて言われるまで想像もしなかった。信じて貰えないのは分かっているし、今ので責任が晴れたとも思っていない。よく考えずに構想した俺の愚鈍さだ。


 だが、引っ掛かると言えば、引っ掛かる。なんで俺でも知らなかったようなレベル3の悪霊なんてトップシークレットな情報を、うちの学校の連中が知っている? だってあの百鬼夜行のメンバーの橇引行弓だって、俺と出会った当初は知っている感じではなかった。理事長だってその事実を隠蔽していたはずだ。


 「おい、まさか……河野壱絵を捉えた目的は……柵野栄助を殺す事のため。でもなんで奴らが柵野栄助について知ってやがる。もしかして手伝ったのは緑画高校の連中じゃなかった……、別の誰かが柵野栄助なんて眼中に無い奴が……」


 眼中に無いという表現は間違っているかもしれない、自分の功績を上げる為の手段の一つとしか考えていないという感じだ。いる……世界を……陰陽師の規則そのものを破壊しようと考えている奴が。


 「なぁ、君は何を言っている? 私の彼女を殺した人間に気がついたとでも?」


 「想像だけどな、うちの理事長は俺なんかよりもよっぽど良心的な人間だ。俺みたいな反対勢力を笑って認めていたくらいにはな。その理事長が女子高生を犠牲にして、平気なはずがないんだ。じゃあ誰が殺した……」


 レベル3の悪霊を敵対しているのではなく、陰陽師の世界のそのものを敵と考えている。柵野栄助を殺す事を自分の名声としか考えていない。


 「なぁ。最近にうちの理事長が馬鹿みたいに頭下げて敬っている奴がいるんだ。そいつは御門城でも決戦の時に、妙に指揮を取りたがって戦闘とは無縁の事に奮闘していた奴でな」


 俺は知っている、戦地であの御門城を我が物顔で渡り歩く馬鹿を。まるで自分が天下を取ったかのように、馬鹿みたいに豪語する奴を。あの時には、『なんか変な奴がいる』とくらいにしか考えていなかった。俺も綾文功刀との刺客との戦闘で手が離せなかったから。


 「あいつじゃないのか? 柵野栄助を殺すのに、犠牲を憂いない」


 「心当たりがあるという事ですね」


 そいつの名前を確か……松林力也。

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