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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
エピローグ
438/462

運転

こうして長きに渡る、宿命を帯びた音無家と特に何もしない陰陽師の戦いは終結した。なんて、気まぐれに言ってみるが、結局はレベル3の悪霊など、いなかった世界に逆戻りしただけで、世界は未だに進展などせず、いつのもように平常運転なのである。


 レベル2の悪霊は世界から消えた訳ではない。これからも各地方の陰陽師は、人々の暮らしに隠れて戦闘を繰り広げる事になる。陰陽師と悪霊という呪いは消えはしない。だが、崩壊しかけていた地方の陰陽師が、復活できたのは阿部清明の子孫が密かに生き残っていた事が発覚したからである。分家の分家のそのまた分家という形で、血だけを絶やさずに不測の事態に備えてあったのである。松林の政権など三日天下もいいところで、あっさりと新しい党首様に握り潰されたらしい。


 当然、世界の危機を救った陰陽師機関である百鬼夜行は、程なくお払い箱。つまりは解散となった。レベル3の悪霊がいない今、一つの土地の無い無名の機関は、組織として成り立たなかった。


 鶴見牡丹について話しておく。あの戦争中に体を張って敵を引き付けてくれた彼女だが、実はあの牛鬼を利用する陰陽師を完膚なきまでにボコボコにしていたらしい。奴が鬼神装甲や妙な真似をする前に、牡丹燈籠と特殊能力で相互不干渉のゾーンを作り上げて……そこからは一方的な暴力だったらしい。あの人はきっと緑画高校に戻っても、立派な番長でいられるだろう。


 五百機五十鈴いおはたいすずさんだが、あの後に目を覚ました後、あまり戦地で役に立てなかった自分を憂いていた。まあ、あの人も年が若いんだから、まだいくらでも成長するだろうと、リーダーが言っていた。百鬼夜行解散に一番に悔しがっていたのは、この人だったが、最後には無理に笑顔をつくっていた。


 この人も緑画高校で教師として来春から赴任する予定になったらしい。次世代を担う若き陰陽師達に、妖怪との幻覚術を教育するらしい。俺の教育係をしていて、誰かに物を教える事に目覚めたらしい。俺もお世話になった人だ、あの人には本当に幸せになって欲しいと思う。


 音無晴菜、音無晴香だが、もう陰陽師というそのものを止めるそうだ。父親の学校理事長というポストだけで、充分に家族三人が暮らしていけるらしく、これからは頼れるお父さんに身を任せる方針に決まったそうだ。まあ緑画高校に行けば、元の百鬼夜行のメンバーとはすぐに会えるのだ。そんなに悲しむ必要なんかない、永遠の別れなんかじゃないのだから。


 そう言えば、仲間と言えば。結局のところ、裏切り者の百鬼夜行メンバーであったダモンと松林は行方不明らしい。まあ機会があればまたどこかで会う気がする。そんなに会いたい気はしないが。


 それで、肝心の俺。橇引行弓はというと。


 ★


 「行弓ちゃん。折角の夏休みの後半戦なんだよ。どうせ家でゴロゴロするんだったら、海とか山とか川とかさぁ」


 そう別に最終決戦が終わって記憶処理や記憶改竄や建物の復旧が終わったとしても、俺の夏休みは終わらないのである。実家に帰ってきて、俺のクーラーの無い部屋で、火車の撒き散らす熱に項垂れながら、椅子に腰掛けて一歩も動く元気が出ないのである。


 概要的な説明をしておく。笠松高校の修復が終わり、全国の捕獲不能の大妖怪を地元に返した後に、俺達の周辺に起きていた異常の記憶改竄が始まった。つまりは俺がアフリカに恵まれない子供たちを救いに行った話とか、緑画高校の編入とか、全てが無かった事になった。俺はまた九月から、この大決戦の舞台であった笠松高校に舞い戻るのだ。


 「今更、どこかへ遊びに行く元気など毛頭ないわ。俺が夏休みの間にどれだけ精神を磨り減らしたと思う。心にだって休息が必要なんだよ」


 「行弓ちゃん、でも行弓ちゃんは正確には笠松の陰陽師じゃないから……」


 「そうだな……。またニート陰陽師に逆戻りだなぁ~」

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