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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十四話
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堪忍

後片付け……陰陽師特有のご都合主義による鬼神スキルを利用した修復作業である。まずはこの学校の建物、壊れた物は全て明日には修復しておかなくては。一般人に陰陽師の存在を知られてはならない。


 まあ、松林がこの世界の調和を破壊してしまえば、俺達の努力も水の泡になるのだが。俺はもう、暫くは戦闘する意欲は湧いてこない。


 「まったく、相変わらずのヒーロー性質の無い男ですよ。はぁ、それであの悪霊を吸収していましたが、大丈夫なんですか?」


 大丈夫じゃない、正直に言って体調が悪い。でも……誰かを救うには、大きい痛みを伴うのは当然だ。愚痴を聞いたら自分だって嫌な気持ちになる、八つ当たりを受ければ嫌な気分になる。でも、それが大切な人なら我慢すべきだろう。そういう理屈だ。


 「大丈夫だ、激痛にはもう慣れている。このくらい優しいくらいさ。それにしても良く理事長を助けに入れたよな。あの激戦の最中で」


 「怪我人の救助をしなきゃと思っただけです。いくら理由が有ったとはいえ、この男を許す気はありません。こんなに学校を滅茶苦茶にして」


 お前も理事長に恨みがあるのかよ、二連続でこんな激闘はさすがの俺でも嫌だぞ。


 「すまかったよ、現地の陰陽師さん。でも必要処置のつもりだったんだ。堪忍してくれ」


 「陰陽師の掟として、第二に優先すべきは一般人に迷惑をかけない事です。夏休みの学校だからとか、夜中で人通りが少ないからとか、人払いの結界を張っているから大丈夫とか、そんな理由を盾にして、好き勝手にしたその根性が気に入らないです」


 まあ確かに人間の世界というのは、理由があっても、正当性があっても、他人に迷惑をかける事が承認なんかされないよな。ヨロヨロと立ち上がる理事長を蹴飛ばして、もう一度倒れ込ませると、勝手に体育館の修復作業を開始した飛鳥だった。

流石は地元の陰陽師、地元愛が強いなぁ……って俺もか。


 「理事長、喧嘩両成敗って奴ですよ。戦争が関わった全員が咎人とがびとなんです。だから穏便に誰も傷つけない人間が一番に偉いんですよ」


 倒れ込んだ理事長を起こそうと手を伸ばした、素直に俺の腕に捕まってくれた。


 「そうだね、結局は相良君のような人間の考え方の方が正しいのか」


 「あぁ? そう言えば、あいつ今頃、何してやがる……」


 ちょっと気になったが、もうこれ以上に色々と考えるのは面倒だ。少しは俺にも休息という物を頂こう。そう言えば、すぐ傍らで振払追継が母親を妖狐を利用して起き上がらせていた。


 「お母さん、長らくお疲れ様でした」


 「晴菜……そうだね。疲れたね」


 まあ結局は俺がした事なんて、最後の仕上げみたいな事で殆どの作業はこの人がやっていたんだなって、思い返した。きっと辛かったのだろう、苦しかったのだろう、だからこそあんなに怨念を抱えていたのだから。だがやっと、本当の意味で彼女は苦しみから開放された。


 「そう言えばさぁ、さっきの妖力を喰らっている中で、変な記憶が思い出したんだが。俺が知っている一代目の振払追継の言葉だよ。なんか残留思念のように頭に流れ込んだんだ」


 一代目、振払追継。音無晴菜の祖母にして、音無晴香の母親である。今なら三人の区別が良く分かる。やっぱり瓜二つってのは初対面だけで、関わっていく中で害が分かるんだな。

 

 「行弓君。それはもしかして……私とお母さんの約束のことかい? 私は母親に頼まれていたんだよ。私も君と戦っている最中に頭に流れ込んできたんだ。『娘と一緒に幸せになって』」


 そうか、最後の切り札を用意していたのは、何も偽物の振払追継だけじゃなかったのだ。あの一代目も遠くない未来に自分の娘が悪霊になる事を予知して、助かるように言葉を暗示させていたのだ。


 「娘と一緒にか。嬉しい誤算だな」


 結局の怨念の写し相手だった振払追継自身が、母親を救われる事を願っていた。結局に絶望を解いたのは、絶望の原因だったことになる。


 「私と……私のお姉さんですか」


 いつの間にか、本物の振払追継、音無晴菜が俺の横まで来ていた。私のお姉さんというのは、きっと偽物だった悪霊の事だろう。


 「あぁ、姉妹で母親を救ったんだ。あいつはちゃんと『母親を救いたい』って願いを叶えたんだよ」


 やったぞ、偽物の振払追継。お前との約束を真っ当したぞ。最後の切り札がきっちり救ってやった。俺の体でお前がやったんだ。お前はちゃんと希望を叶えたんだ。

また実験で遅くなりました。すいません!!


 これで24話完結です。次はエピローグで何話か使います。


 あと、この四日後くらいに「another final」をさせて下さい

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