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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十四話
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断罪

 世間でいうと俺の思い描いている夢は、『茶番劇』とか『マンネリ』とか言うんだろうな。でも俺が求めている世界は……そんな誰も喜ばない世界だから。勝利の栄光なんて消えてなくなればいい、平和の為なら勝利なんか消えてしまえ。


 「いろいろ言ってあげたい事はあるけど……私はそんな損得感情でこの男を殺そうとはしていないよ。私がこの男を殺す理由は『断罪』だ。罪を犯した人間には罰が必要だ。当然の報いを受けるのが、世の筋という物だろう」


 俺はそんな正しさは認めない、人間は許しあえる生き物だ。


 「罪を持つ人間を許す心。それが悪霊にならない最大の終着点じゃないんですか。例え舌を切られても、金貨や財宝の詰まった小箱を渡す。そうすれば、世界には悪霊なんて生まれない!!」


 「それじゃあ雀さんが可哀想じゃないかぁ!!」


 麒麟の突進が空を切った、もう俺の目線なんかじゃ捉えられない、高速を超えて音速。音速を超えて、光速だった。作戦なんか立てる暇なんか無い、対処する時間なんかない。俺は木の葉が風に飛ばされるように吹っ飛んだ。痛みは我慢できる、でも彼女の気持ちは受け止められない。


 「雀が可哀想? 違いますよ、何を言っているんですか。勝手に他人の家に忍び込んで、好き勝手に自分の旦那と戯れられるお婆さんの気持ちは何ですか。本来的に餌を与える義務なんか無い婆さんに、非情者扱いする読者が正しいんですか。そして欲望に忠実に醜い選択をしたお婆さんは誰よりも『人間らしさ』を持っていた」


 屁理屈? 言い訳? 戯言? 


 違う、そんなんじゃない。俺はあらゆる視点から物語を見つめているだけだ。物語をそのまま捉える必要なんかないだろう、正義の味方なんか世界にいない。そんな奴がいるとすれば、そいつは偏見の塊だ。きっと誰か不特定多数を傷つけている。自分の味方しか幸せに出来ない馬鹿野郎だ。


 「あらゆる角度から世界を覗く。それが俺の主義です。正義の味方ではなく、悪の仲裁者でいたい。だから……あなたの正義の名の元にする、断罪者による死刑執行を俺は認めない!!」


 「私が断罪者で、君が仲裁者か。クックック……笑わせるなぁぁ」


 受けた傷など回復した、物理攻撃なんか悪霊同士の決闘に効果などない。でも俺は刀を強く握った。もういつものウジウジした迷いは晴れた。俺の頭にあったのは全力で彼女の死刑執行を食い止める事だ。それがはっきりした時に、全身の妖力と細胞が初めて味方をしてくれているような気分だった。


 リーダーは左右の両剣、俺は一本の御札の塊を両手で握り締め、精一杯振るった。半分くらいは躱せない。斬撃の速さで追い抜かれ、斬撃の威力で叩き折られ、斬撃の与える振動で俺の体は何度も地面に屈した。脇から麒麟の容赦のない蹄が俺の軸足を屑じた。そしてまた地面に倒れ込み、血を拭う。


 そして、その度に立ち上がる。


 「悪霊というよりもゾンビの生き様ですね」


 「男には、死ぬとわかっていても戦わなきゃいけない時があるんですよ」


 「そんな渡島さんみたいな臭い台詞を言わないでくださいよ。頭が痛くなるじゃないですか」


 体育館が歪んだ、視界が揺らぐ。俺だって死に掛けでいる時間の長さに意識が朦朧として気分が悪い。ただ泣き言を言っている場合でもないのだ、俺は歯を食いしばってでも、地べたに這い蹲ってでもこの人を止めなくてはならない。


 「なんで君が私の邪魔をするのか、理屈は理解したよ。でもそれを優先して採用してあげるわけにはいかないね。小学校の道徳じゃないんだ、世界中はお手々繋いで生きてなんかいないんだよ」


 「いいや、誰かを許す強さを持っているのが人間です」


 俺の体の中にいる音無晴菜よ、お前の念願が叶う瞬間が来たぞ。お前の意思はもう無いだろうが、俺がお前の意思を受け継いでいる。お前が選んだ最後の切り札が、お前との約束を果たしてやるぞ。


 「「鬼神装甲!!」」

 更新、遅れてすみません


 ちょっと学校が長引いて……


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