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吸収

 「鬼神スキル蓮柱!!」


 俺は正真正銘の最後の賭けにでた。この行為は完全に全く何の保障もない、推察だけの作戦である。

 先ほど一反木綿を六体倒した時に、とある奇妙な現象が起きた。相手の妖力を吸収する、そんな不思議なことを狙って発動出来るならば、俺の弱点である妖力五分割を補えるかもしれない。むしろ相手を弱体化させ、自分だけが強化出来るなら……勝てるかもしれない、飛鳥に。


 しかし、さっきの戦車への変化は、飛鳥の妖力を吸収することを計算に入れて行った作戦ではない。ただの偶然であり、ただの奇跡だ。奇跡は二度起こらないから奇跡である。俺は相手の妖力を吸収する方法を定義付けしなくては、ただの奇跡である。このまま飛鳥に負けて、終わりだ。俺は妖力吸収の具体的な発動方法を考えた。


 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 右腕をポケット入れお札を握り、必死に妖力を送った。当然、すぐにバッテリーが切れる。ポケットが破れ、一応は剣の形くらいにはなったが、こんな剣じゃ脱出なんて不可能だ。俺の妖力はすぐに空っぽになり、俺の身に途轍もない疲労感が襲う、ぐったりと倒れてしまいそうだ。


 だが負けられない、絶対に。ここで諦めたら、もう一生飛鳥は俺を陰陽師として認めてくれないだろう。何より、その飛鳥自身が俺を諦めない、そう言ってくれたのだ。例えどんなに俺とあいつの幼馴染の関係として歪んでいても、やっぱり飛鳥は俺を見捨てないでくれた。だから、俺は……。


 「諦める訳にはいかないんだよ!! 絶対に!!」


 俺はもう空のはずの妖力を、体に送り続けた。意味は無くても。いつか飛鳥の妖力を奪うタイミングが来るまで。でも何か一つ足りない、手応えが全くないのだ。何かが足りない、なぜ俺は飛鳥の妖力を奪えない?


 ……思い出した、あの時と今の違いを。火車をバイクに変身させた時に、俺の頭の中には確かに二輪車があった。あの時、俺はかなり巨大な戦車を作ろうとした時も、明確に俺の脳内には戦車のビジョンがあった。つまり俺が怠っている作業は……頭の中に具体的な剣のイメージが無い。そこだ。


 俺は飛鳥を倒す際に、どんな武器で戦うべきだろうか。あいては木綿、つまり布。だったら話は早い。特大サイズの鋏だ!!。ようやく原理に辿り着いた。光線が飛び散り、火車同様の光が俺を包む。その間に、俺に巻き付いていた一反木綿の三体が力尽きる。


 「行弓君、何なんですか、それは」


 眩さが消え、光の中から俺が現れる。両手にとんでもない武具を抱えて。

 

 「決まっているだろ、鋏だよ。これが俺の切り札だ」


 「はあ、なるほど。やっぱり、行弓君は発想が残念です」


 「いいや、これでいいんだよ。だってこれが俺だ」

 次週、決着

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