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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十四話
426/462

矛先

 悪夢を見ている気分だ、正直に言って最高に気分が悪い。無力な自分が情けないとか、運命を呪ってやるとか、痛みを分かち合えないとか。襲かかってくる人生の不条理にいい加減に嫌気がさした。


 リーダーは多くの人類を救った、紛れもない英雄だ。彼女の想像絶する苦しみとの戦いを、俺が理解する事は不可能だろう。それでも俺は最後には皆で笑い合えるような未来を想像していたのに。彼女がいなくなってしまったら、俺の微かな願望が爆散してしまう。


 「この世に神様なんているならさ。心から許せねーよ。漫画じゃないんだ、こんな不幸が公認されてたまるか!! あの人は本当に不幸な英雄だったんだ。だから絶対に最後には笑顔で幸せにならなきゃいけないんだ。それを……このザマは何だぁ!!」


 もう俺は誰に怒りの矛先を向けているのか、訳がわからなかった。どうしてこうも俺の人生は上手く機能しない。少しの情とかないのかよ。あんたの方が俺よりもよっぽど自己犠牲じゃないか。


 「えっと……どうした? 行弓君」


 「リーダー。あなたは今、悪霊と化しています。もう侵食が進んで、自力ではどうしようもない状態になっている」


 リーダーが驚いた顔をした、自覚がない? 自分がもう人間としての妖力を殆ど保てていない現状に気がついていない? 理解不能の原因は自我を持っている事にある。彼女は別に意識を失ったり、誰かに支配されたりなどしていない。だから始末が悪い。


 「何を言っているんだ? 私は確かにご存知の通り悪霊だが、麒麟の神聖な波長により緩和されて意識を保てている、その私が完全に悪霊になるな……」


 リーダーが最後まで言い終わるより前に俺が体育館の壁を目掛けて人差し指を指した。その先にいたのは、死にかけの理事長。そしてその周りに無残に広がる負傷者の数々。そして理事長に今もなお押し潰して、トドメを指す指示を待っている麒麟がいた。


 おかしくなったのは、麒麟の方かもしれない。形状が明白に変わりきっている。妖力の波長は悪霊の波長になり、神秘的だった目の金色は剥がれ落ち濁った緑色をしている。龍のような顔や牛の尾、馬の蹄は変わらないが、黄金の毛はどこにもなく、纏っているのは汚い灰色の革だった。


 何よりもあいつの行動に問題があるのだ。麒麟の普段の性質は……『穏やか』。その一言に尽きる。足元の虫すら踏めない程に殺生を嫌う妖怪のはずだ。あんな風に、ただ相手を傷つける踏み込みをする奴じゃない。今までのリーダーの闘いの中にも、決して『足』を利用した攻撃は繰り出していなかったのだ。


 鳴き声は音階に一致する、なのに奴の声は只の猛獣の声と変わらない。歩いた跡は正確な円になるというが、この戦いの惨劇の跡をを見る限り、そんな風には見えない。ただの焦げ跡でしかない。


 「応龍、鳳凰、霊亀。「四端しずい」と呼ばれる最強の妖怪に含まれる麒麟がここまで汚れるなんて。奴も普通の妖怪よりかは耐性があったが、時間の問題だったのか」


 麒麟きりんは信義を表し、鳳凰ほうおうは平安を表し、霊亀れいきは吉凶を予知し、応竜おうりゅうは変幻を表すという。麒麟がこの夫婦の元に現れたのは正しく、麒麟の習性そのものだ。彼女の世界を守るための本物の正義があったからこそ、お互いを信じ合えた。そして……二人纏めて……。


 「き…り…ん…。あれ? どうしてあんな姿に、私はいったい……。頭がぼやける、目が痛い……。何だろう、この感情は。悪意? 悪気? なにこれ」


 確かに自我は保っているだろう、悪霊はそんなに生温い作りじゃないからな。例え意識があるとしても、何も変わっていないのではない。他人を許せなくなる、暴力に違和感を感じず、理屈を捻じ曲げて肯定してしまう。性格が残忍で、悪徳なる。人間性が変わってしまうのだ。


 よく世間で言われる、『強凄ぎる力が人格を変える』ってやつだ。金だったり、権力だったり、資産だったり、名誉だったり…………悪霊になったり。


 「リーダー、大丈夫です、俺が絶対にあなたの呪いを解いてみせます。俺を救ってくれたあなたを、今度は俺が救う。だから……あなたの娘が残した最後の切り札を信じて!! 最後まで!!」


 安心しろ、偽物の音無晴菜。お前と俺の拳で……お母さんを救おう。

 これ、四端が全部出るフラグだと考えている方。


 申し訳ないです、ストーリー的に無理です。


 でも、もし、『橇引行弓』の戦いを第一部と考えるなら


 出てくるかも???

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