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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十三話
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正念場

お手数なんてレベルじゃなかったんだが、まあいい。問題は追継がどこまで俺に起こった事件の一部始終を見ているか、というのが俺の気にかかっている。俺が悪霊だと知ったらどう思うだろうか。いやそれよりももっとマズイのは、奴が俺の殺される瞬間を目撃した場合に、どんな過度な責任を感じるかだ。


 「えっと……お兄さん。その姿は……元に戻ったのですか? じゃあ柵野栄助は既に倒した……良かったじゃないですか。でも、ここが笠松高校の応接室……。じゃあ柵野栄助がこの部屋に乱入してきた…。いやでもじゃあ誰があいつを…」


 「あれ? 追継。お前って今まで何があったか分からないのか?」


 「はい、すいません。今まで意識がなかったです」


 それは良かった、とても助かった。これであいつが俺が死んだ瞬間を見ていて、任務失敗とか仲間の死の体験とか味あわせちゃだめだ。これでもこいつは小学生なのだから。


 「いいか、戦争は終了した。柵野栄助は完全に消滅したよ。だから戦争が終わったってリーダーに終わらせるように説得に行かなきゃならないだろう。でも頭に血が上って話を聞いてくれないかもしれない。だからお前の力が……」


 矛盾している事は分かっている、おそらくリーダーが冷静であろうとも納得はしないだろう。だって、柵野栄助を倒したなんてどんな理屈を言えば説明になるだろうか。


 順を追って説明すると、俺が奴らに殺されてってとこから言いたくない。だってあそこを守っていた仲間たちの責任が問われる。次に俺が柵野栄助と音無晴菜(偽)と時間を止まった世界で話し合いをし、そこで三人で融合しました、なんて説明は超常現象を何回発生させれば気が済むって話だろう。まあ、事実なのだが。


 レベル4の悪霊です、柵野栄助は消滅してもう二度と復活できません、私は実は人間でもあります、これ以上に交戦は無駄です、戦争を止めて下さい。うん、確実に全てを言い終わる前に、俺は何回か殺されそうになるな。単純にこの姿で会いに行くならば、柵野栄助としか思われないだろうし。


 「どうやって柵野栄助を殺したんですか?」


 「えぇ!! えっと……正直に言って信じてくれますか? かなり意味不明な事を言うけど」


 「はい、大丈夫ですよ。お兄さんの身に起こる怪奇事件なんてザラでしょう。もう何があっても驚きませんよ。飛鳥さんも知りたがっているようですし」


 さっきまで萎れていた飛鳥もすっかりいつものクール姿に変わっていた。一反木綿を利用して、ドア際まで運んでソファーに寝かせていた。俺は二人で両手で運ぶつもりだったのだが。まったく仕事が早い人だな。そして俺の背後に立って、情報を聞こうとしている。いつもの飛鳥に戻ったのだな。


 「はぁ、お願いだから怒らないでくれよ。今回は生きるために仕方がなかったことなんだから。それと……これが終わったら、二人共手伝ってくれ。こんなことを言いたくないんだけどさ、たぶんここからが、正念場だ」


 額から汗が滲み出る。俺はリーダーと理事長を……救えるだろうか?


 「行くぞ」

 ★

 散々に怒られた、なんて無茶するんだ、とか言われた。どうしようもなかったとは言え、まあ俺が怒られる理由は幾つかあるので、文句言えないだろうな。偽物の音無晴菜については、随分とあっさり理解された。実は追継は既に母親から、そんな悪霊が過去にいたと聞いていたらしい。その時の母親からの話は半信半疑だったらしいが、今回の一件で信じてくれたみたいだ。


 俺たちは三人で行動を開始した、応接室に隠れる理由がなくなったので、ドアから廊下を伝って階段を降りる。激戦区であったグラウンドの方へ向かうことに決めたのだ。


 戦争はもう既に終局へ向かっていた。俺達があの三人の潜入隊とドンパチやっている時に、こっちでも激しい火花が巻きちっていたらしい。倒れて動けない巨大妖怪、もう修復不可能に見えるほどに崩れでいる校舎、その辺に横たわっている陰陽師たちの姿。巫女服や緑画高校のバンダナ野郎がうじゃうじゃいる。


 「おい、これって……無事なんだよな」

 

 鶴見牡丹も心配なのだが、一人で特攻していったリーダーが不安だ。もうすでに……いや、変な想像は止めておこう。

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