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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十三話
420/462

特権

 越天仄は悲劇の快楽主義者だ、よって戦争だの勝敗だの、あまり重視していない。ただ面白い場面に出くわせばいいと思っているだけの存在だ。だからこその相手の強さと同化するコピー能力だ。圧倒的よりもギリギリの接戦を好む、あいつらしい能力だ。


 だが、俺も別の理由でこの戦争の勝敗に興味がない、むしろキチンと勝敗が決するのを避けようと思っている。


 「レベル4……そんな馬鹿なぁ!!」


 「あぁ、俺も馬鹿らしいと切実に思うよ。でも、これが現実なんだ。誤解しないでくれよ、俺は人類最強の宿敵になんかならないんだから」


 原点回帰、生命の円環。これが俺の身に起こったレベル4の悪霊としての特権だ。いわゆる人間として復活する、恨みを持って現世に復帰したはずの悪霊が、殺された事を帳消しにして、人間として復活したのだ。これが……一千年に及んで人類を苦しめた悪霊の最終地点。


 「レベル4の悪霊の能力は……人間になること。いや、人間であること。俺は人類の敵なんかじゃない。俺は人類の一員になったんだ」


 「そんな……幾多の人間がそれを求めて失敗してきたと思う。錬金術を、化学を、神学を、倫理学を、あなたは全ての学識を無下むげにしたんですよ」


 人類の進化する瞬間なんて、皆が大体そんな感想を持つだろうが。かの有名なダーウィンが当時の人にどれだけ馬鹿にされたと思っている。認めたくなくても、世界がこう出来ていたんだから、仕方ないだろうが。


 「ありえない……ありえ……はっ、うわぁ、あぁ、ぐぅ」


 気絶した、俺の話に恐怖したとか、睨みつけられた恐怖とか、そんな物じゃないな。これは物理的な物だ。奴の首を後ろから手刀したのだ。犯人は決まっている、奴の背後にいた人間だの一人しかいなかったのだから。


 「宝記菖蒲……」


 「お前の言う通りだよ、こいつにも私にも勝目なんかない。二人でタッグって話にもならないし、しても……駄目だろう。言葉通り、お前は次元が違う。私みたいな女にも、あんたが次元を超えている存在なのはわかるよ」


 眼鏡女を抱き抱えるとため息をついた。戦わずして敗北を認めてくれた? これ以上の戦闘は無意味だと理解してくれた。


 「私達三人の任務はお前の『一度の殺害』だ。二度目に責任を感じるつもりはねぇ。お前が人間に戻ろうが、関係ない話なんだよ。……だから、こいつを……許してやってくれないか? もう私たちも関わらないからよ」


 勝てない相手との交渉にしてはお粗末だ、これじゃあ譲歩の懇願だ。俺が昔に綾文功刀に対しておこなったようなことだな。なんか立場が逆転してみると、なんか嫌な気分だな。


 「無論だ、俺はもうこの戦争が終わればいいと思っている。戦意が喪失してくれたなら願ったり、叶ったりだよ。でも殺された恨みだ、少しだけお願いを聞いてもらってもいいか。まだ牛鬼の使い手が残っているだろう。これ以上の戦闘は控えるように言ってくれないか。鶴見にも『撤退命令』だとか言っておいてくれ」


 そう言い終わると、俺は五百機さんと鶴見の倒れている壁の方へと足を進めた。奴らの返事を聞き返す必要はない、どうせあいつは俺に勝てない。ここで俺を出し抜く目的で鶴見を襲ったりしないだろう。俺が後でどんな仕返しをするか、分からないから。恐怖による支配か。そういうの好きじゃないな。まああの宝記菖蒲の顔つきは、満足に仕事をやってくれるだろう。


 倒れている五百機さんに手を伸ばす。まだ意識が回復していない。……この人には教育係として本当に迷惑をかけた。感謝しても感謝しきれない。


 「飛鳥、ちょっと手伝ってくれ。そこのソファーに五百機さんを移動する。それから……大丈夫か、追継。お前は意識は回復しているだろう。五百機さんの犠牲を無駄にするな。これからお前には手伝って欲しいことがある」


 振払追継は自力で立ち上がった、苦しそうな顔はしているが、限界まで衰弱しているとは思えない。一連の動向を見ていなければいいのだが。


 「どうやらここの処理は済んだようですね。お兄さん……、お手数おかけしました」

 すいません、今日の更新は早いですよね。

 ちょっとこれから用事があるので、ご勘弁ください

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