幼馴染
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俺の切り札はあっさりと封じられた。たった数秒で。
「行弓君、あなたは自分の弱さを才能のみと思っているでしょうが、大間違いですよ。それ以前に貴方には実戦経験が足らないんです。たかが一週間で、何年間もの貴方と私の力の差が埋まるはずがないでしょう。さっきの妖力吸収には結構驚きましたが、完成した後に、ちゃんとどうすべきかを、考えて打ち合わせるべきでしたね。そもそも戦車って、子供の玩具じゃあるまいし。まさかあんな真剣身に欠ける演出で優位に立った気になっていた訳ではないですよね」
思いっきり、勝利を確信しましたけど何か? 何て、恥ずかしすぎて言えない、まさか飛鳥にふざけていると思われていたとは。……確かにそう思われてもしゃーないか。
「その焦った顔は図星ですか。全く、貴方が何で陰陽師なのかさっぱり分かりません」
「安心しろ、特に何もしない陰陽師だ」
「私はそのキャッチフレーズが大嫌いです」
飛鳥はいつも俺を否定する。昔はそんなになかったのだが、特に俺が機関からの放置状態になったあたりから、もう俺の生き様を否定しまくった。
「まだ精一杯努力して弱いなら納得出来ます。何も努力しないで、強いのも許容範囲でしょう。なのに貴方は弱くて、そして何もしない。最悪じゃないですか」
聞き捨てならない、あまりに一方的な意見だ。
「お前は好いよな、強いし、才能もあるし、周りからも認められている。俺みたいな落ち毀れの苦悩なんて理解出来る訳がないだろ。何が努力だ、俺だって努力した時期だってあったんだよ。なのに何にも意味はなかった。お前みたいな奴に、頑張っても努力が実らない人間の何が分かるんだよ。人生なんて、始めから平等じゃないんだ。お前と俺は始めから同じスタート地点にいないんだよ」
自分でも途中から何を言っているか分からなかった。ただこれが、俺の心の中の本音なのだろう。
「泣き言ですか、男のくせに見っとも無い」
何とでも言え、俺は今日お前と語り合う為にこの場所に来た訳じゃない。お前を倒す為にここまでやって来たんだ。だが正直ここまでかもしれない。俺にはもう、飛鳥を倒す策も、この拘束から抜け出す策も無い。頭の中にこの状況を上回る手立てが一つも無いのだ。
「行弓君、私を倒そうと本気で思っているなら、死に物狂いでその拘束から脱出して下さい」
まただ、俺に情けを与える。だが飛鳥は油断なんかで、こんなことをしている訳ではない。恐らく、俺にまだ期待しているから。弱い俺を否定しているから。俺を諦めていないから。
「今日だけです。行弓君。貴方に最後の期待をします。元から強くなく、訓練で強くなれないなら……実戦で強くなって下さい。貴方がまだ試したことのない、最後の強くなる機会です」
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