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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十三話
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浸透

 俺があの家族の交戦を止める、悪霊との戦いで音無晴香が過度に傷つかないように、俺という秘密兵器を事前に用意していたのだ。もしかしたら、俺が陰陽師機関を脱退する事や、百鬼夜行に加入する事を読んでいた……、母親の精神の引き出しに潜り込み、ある程度の未来の構想を読み取り、俺という対策を仕掛けていたのだ。


 「いや、待て。まさかお前は柵野栄助が俺の能力を狙って憑依してくる所まで読んでいたのか? だとしたら……お前は化物か」


 柵野栄助は偽物の音無晴菜の持つ『浸透溺愛オーブシンクロ』を欲しがっていた。世界中の妖力を持つ存在を奪ってしまおうとか言っていた気がする。


 「そうそう、私も作戦の歯車だったんですよ。君が完璧な悪霊にしてしまう為のね。そうして私の力をも利用して自分の父親を止めたかったわけですよ」


 俺を完璧な悪霊にする事は、作戦として危険な賭けだったはずだ。むしろ一般人の発想からいけば危険しかなく、成功確率は極めて低かった。だが、奴には成功する確信があったのだ。


 「お前の母親も悪霊だったから、俺が悪霊になっても力を見方として認識してくれる。そして渡島塔吾を確実に単独で止めるには圧倒的な……それこそ柵野栄助程のパワーが必要だった。ここまでの展開全てが、お前の計算通りだったのか」


 小さく頷いた、おそらく奴が復活できたのは、本格的な悪霊の波長が遺産として残していた自分の能力に反応。そこから拙い力を振り絞り復活。それに気がついた柵野栄助が見事に自分が餌に釣られた事に気がついたのだ。


 「じゃあ……渡島塔吾も百鬼夜行もレベル3の悪霊も俺も……全部がお前の計算式の上を歩んできただけなのか」


 「それは……違うかな」


 妖力吸収。ほぼ完璧な心理掌握を次元的に確立させた結果から未来予知を完成させた。この作戦に穴があったとしたら、能力を託した人間である橇引行弓が、作戦完了に足らない低スペックだった事だ。


 「だって結局、お母さんは助かってないじゃん」


 確かに今のあの二人は衝突している、全国の大妖怪まで引き連れて戦争と化している。それどころかあの二人が直接対決している最中だ。偽物の音無晴菜が一番に恐れていた最悪の状況だな。このような状況を避ける為に、俺を用意していたのに、応接室なんかで死んでいるだから面目もあったもんじゃない。


 「切り札が発動しなかった……」


 「そうそう、せっかく対策を講じていたのに、これじゃあ意味がなかった。この状況に当てはまりやすい可能性が一番に高かったのが君だったが、私は託す相手を間違えたようだな。これが最後の結果だなんて」


 まったく俺の存在が意味がない。他人を駒のようにして、悪霊にするように仕向けて、自分の母親の事しか考えていない。それでいて、父親の真意を汲み取っていない。さらに言うなら自分の計算違いを人のせいにしている。


 所詮、こいつも悪霊か。


 「……あのさぁ、でもこのままじゃ問題は解決しない。時間が動き出せば、あの二人が戦争をまた始める。多くの人が傷つく。百鬼夜行のメンバーも緑画高校の連中も……。そして俺の役目も果たせない」


 結局の全ての役目が果たせない、『戦って欲しくない』、それは個人的な感情としてはこいつのお願いは守ってあげたかった。だが叶わなかった、果たせなかった、全てが終わらないまま、最悪の結果のまま、事柄が騒動で終わりが始まろうとしている。


 「……そうか、そうだったのか。俺はようやく誰かの思惑の中で戦わずに済む、手にひらの上で戦わずに済む。自分の正義心って奴だけで闘う事ができる。おい、振払追継さんよぉ、最後にもう一回だけチャンスをくれないか」


 柵野栄助は笑った、音無晴菜が驚いた。


 「頭がすっきりしてきた、頭の中から痛みが消えていくみたいだ」


 俺はこれから完全な悪霊として二度目の人生を持ったまま復活する。その時に俺は何をすべきなのか分からなかった。混乱したままだった。だが、今は違う。ちゃんと誰かの為に戦える。


 「漫画じゃ『誰かの為ではなく、自分の為に戦え』って言うけどさ。俺はやっぱりヘタレで貧弱で脆弱だからさ。誰かのためにじゃなきゃ戦えないんだ。誰かの悲しい気持ちとか、すぐ傍に困っている人がいないと気合が入らないんだ。『闘い』ってのは誰かの為にするもんだろう。だから……復活したら、お前の為に闘う。お前の為に全力で戦ってやるよ」

 すいません、やっぱり時間なかったので


 柵野栄助の能力説明は明日で!!

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