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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十三話
413/462

行末

二回目の死を受け入れる事はできるだけ避けたい、柵野栄助の力を受け継ぐ限り、俺が理事長やリーダーのように上手い具合に人間社会に溶け込めるとは思えない。


 「別に俺は人間に何か恨みがある訳じゃない。だからお前みたいに無差別殺人なんてできないよ。でも殺されるのは嫌だから……とにかく逃げる。悪霊として人生を逃げながら生きていくよ」


 柵野栄助が蹲った状態から立ち上がった、そして俺に向かって鬼のような形相をすると、少しずつ近づいてきた。悪霊らしく生きようとしない俺の事が嫌いなのか、自殺を選ばない心意気の無さを落胆しているのか。


 「君は問題を先送りにしているだけじゃないか。もう二度と逃げないというのが、日野内飛鳥さんとやらの約束だったんじゃないのか」


 逃げない……か……。死んでもそんな縛りがあるとは。でも逃げるという選択肢を一回捨てるとして、俺は何と闘うというのだ。松林力也か、あいつは確かに陰陽師の世界を崩壊させようとしている。だが、俺がどうにかしていい相手か。それこそ出過ぎた真似じゃないのか。


 「確かに倒したほうがいい標的はいる。でも俺は悪霊で……部外者だ。初めから陰陽師として本部との契約をしていない俺で、今は完全な悪霊な俺だ。これからの陰陽師の行く末を決める大勝負に俺が首を突っ込んでいいのかな」


 「私はそのまま陰陽師を根絶やしにしてくれると、先輩冥利に尽きるというものだがね」


 そんな事ができないから困っている、さてどうすれば俺の特に何もしない陰陽師として、松林を止める事が出来るだろうか。松林の馬鹿を倒す理由は絶対に個人的な理由になる。気に食わないからとか、嫌いだからとか。奴を倒す大義名分が俺にはない。飛鳥や他の百鬼夜行のメンバーならあっただろうが、俺は悪霊だ。駄目に決まっている。


 「でさぁ、こんな感じで話が煮詰まると思ったから、彼女をこの悲壮感漂う最悪ムードに呼んでおいたよ。彼女は……いつぞやの君の知り合いだ」


 それはもしや……烏天狗……なのか。あいつが生きているのか、もしかして妖力吸収の被害にあったとしても、奴は生きていたのか?


 「おい、それって……」


 「あぁ、もう到着していたか。君の真後ろにいるよ。振り返ってあげるといい」


 こんな無様な姿になって、生きている意味まで自分に問いかけた。あいつが消えて心が真っ黒になった、俺の一番の友達が消えてしまったと思った。だから……俺の詰んだ人生が晴れ上がったような気分になった。


 こんな俺を見て奴は怒るかもしれない。決断を出せない弱さ、松林を嫌煙している未熟さ、正義のために人類のために最後まで戦おうとしない醜態、俺を見て脱力するかもしれない。だが、なんでもいい。またあいつの声が聞こえるなら、そんな形でも……。


 「からす…て…」


 「ありがとう、お兄ちゃん。私のお母さんを支えてくれて」


 違う、烏天狗じゃない。こいつは……。きつね耳のフードを着ている。金髪で小柄な容姿、可愛らしいその姿は小悪魔のようなオーラを出している。背中には木の葉の家紋のようなものが。俺はこいつの事を知っている。


 「……振払追継!!」


 「そうだよ~、でも違うよ。君に会ったのはたった一度だけ。私は確かに振払追継で音無春菜ですけど、私は残念ながら君の知っている私ではない」


 意味が分からない、何を言っているのだ。確かにこいつがこの場にいるのはおかしい。奴なら宝記菖蒲の攻撃を間接的に受けて五百機さんと壁で倒れているはずだ。あの場所から、こんな距離まで瞬間移動でもしない限りは不可能だ。レベル3の悪霊でもあるまいし。


 「こいつは渡島塔吾と音無晴香が出会ってすぐに生まれた悪霊でな。自称、あの二人の娘であり、『愛』を司る悪霊だ。君の不可解な『妖力吸収』の技術を捧げたやつだよ」

 明日の投稿で、転がっている伏線を全て回収します。


 ①柵野栄助の能力名。(概要は全て語り尽くしています)


 ②振払追継(前)の能力。注:番外編を読んでおくとここから面白い


 ③振払追継の能力名。

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