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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十二話
406/462

粗末

 ★

 俺はこれ以上に何を失えばいい? 体は奪われた、式神は奪われた、一体は殺された、能力は奪われた。元から役立たずの代名詞として屑呼ばわりされていた俺が、持てる全ての物を失って綾文功刀を倒し、ここまで歯を食いしばってきた。


 じゃあ今度は意識さえも失えばいいのか。文字通りに命を捨てて、烏天狗が残してくれたこの『意識』すらも、俺はなげうたなくてはならないのか。陰陽師機関は消滅し、元の上司に殺されかけ、仲間は傷ついていく。神様は俺にとっとと死ねと暗示しているのか。柵野栄助を倒すには、俺が命を捨てる以外に方法は無いのか。


 「さぁ、急いで躱せよ、オカッパ!!」


 「開放されてスグにまた拳で特攻ですか」


 飛鳥が焦り顔になった、さすがに盾を全て投げ打っていたのが仇になった。開放された瞬間に一気に不利になる。でもいくらフルパワーじゃないとはいえ、一反木綿の七体の縛りを只の怪力で破るなんて、あいつ本当に化物か!!


 「おらぁ、死んでしまえ。陰湿野郎!!」


 奴の拳が今度は飛鳥の生身に突き刺さる。一撃の破壊力が途轍もないあの打撃力だ。下手に受身が取れなかったら本気で死ぬ。


 「鬼神スキル『宵氷』。私だって一枚岩じゃないんです。一反木綿が防御に回らない時の対処なんていくらでもあるんですよ。さて、宵氷の能力くらいは知ってますよね」


 よし、上手い。腕が顔に直撃する寸前に宵氷で動きを止めた。自分が拘束された事で油断した、一瞬の優越感が隙を生んだ。奴の動きが飛鳥のすぐ傍で止まった事で、カウンターが一番の絶好の位置で放てる。


 問題は鎧なのだ、攻撃力と防御力は比例する、攻撃に優れている事は、防御にも秀でる。だから意味のある特攻なのだから。飛鳥が得意とするのは『鋭さ』じゃない。刀とか槍とか戦わない飛鳥に,一反木綿がいないこの状況では反撃はできないんじゃないか。


 飛鳥は攻撃を放った、が、それは俺の予想を斜め上に上回った。パシッツッ!! といい音が鳴る。普通の人間ならば真面な攻撃が出来ないならば、距離を取って一反木綿を回収に急ぎそうな所を……あえて平手打ちした。


 「あなたは何を考えているのですか。一歩間違えれば死ぬ場面だったんですよ。自分の命を粗末に扱う人間は、他人の事も大切に出来ません。例え仲間に何を言われようと、命に関わる事だけは、自分の生命を優先しなさい!!」


 説教ぅ!! この場面で平手打ちして、説教ぅ!!


 ちょっと何を考えているんですか、飛鳥さん。確かに奴の『命を投げ打ってでも』みたいな精神は俺も気に入らなかった。まあ向こうからすれば、俺達のような考え方をしている奴を、情けない奴とか、ナヨナヨした奴だとか思うのだろうが。


 宝記菖蒲は鬼のような形相で飛鳥を見ている。プライドに傷を付けられたか、そして言われっぱなしだが、口が動かない為に言い返せない自分が憎たらしいのか。


 「私はあなたのような闘い方をする人を絶対に認めません」

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