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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十二話
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強請

 飛鳥の全力を見たことが俺はない、俺は小学生の頃は事務作業くらいしかさせて貰えてなかったから。飛鳥と一度は全力で戦った事があるが、思いっきり手加減されていたから、正直彼女の本領を垣間見た訳ではない。


 「無駄な抵抗を止めて投降してください。もうあなたに勝機なんてありませんよ」


 空中で旋回していた赤と橙、御札で待機していた灰と藍も攻撃に加わった。あの控えている眼鏡を警戒するための布石だったのだろうが、そんな悠長な事を言って倒せる相手じゃないのだろう。


 「っちぃ、なんだこれ。ぐっ、ううう、ぐぅう」


 ようやく黒色の一反木綿の絡まっている首の痛みが我慢の限界を超えたのだ。これで一反木綿を解こうとするも消えてしまうだろう。


 「ごおおぃ、お前ぇ。手伝え、ヴァたしをだずけろ」


 やっぱり救援を呼んだか、後ろの陰湿眼鏡に。これが怖かったから飛鳥は十二単を使わずに温存していたのだから。これで二対一に構図になるならば、本当にあすかには苦しい状況になる。鬼神装甲を扱える化物二人を相手に飛鳥が応戦できるはずがない。


 「飛鳥、手を貸すぞ。そいつらが気に入らないのは俺も同じだ」


 「行弓君に何ができるのですか、無い物を強請ねだっても仕方がないですよ。戦争なんです、一体一になるタイミングの方が少なくて当然なんです。それよりもあの二人を起こした方がいいんじゃないですか。たぶん下敷きになって埋まっている追継さんのほうは、意識を回復させていると思いますよ」


 ………気持ちは大いに分かるのだが、飛鳥の方を放っておいていいのだろうか。このまま飛鳥が危ないタイミングで、俺が飛び込んで壁になったり、飛ばされた飛鳥をキャッチする事ができない……なんか自分で考えていて悲しくなってきたな。俺って本当に役立たずだな、やっぱり二人の救出に出向こうか。


 「やだ、助けない」


 おい、あの眼鏡。さらっと気色の悪い笑顔でトンデモない事を言ったぞ、助けに入らないのかよ。いくら機関が別で、仲間意識を持っていなくとも、仲間を見殺しにしたなんて事実があったら、自分の評価を下げるだろうに。いや、そうでもないのか。世紀の柵野栄助を倒した過程とあらば、仲間の事故死なんて想定内という具合になってしまうのだろうか。


 「ごぉごい!!」


 「だってさぁ、見ていてイライラしますね。なんて見苦しいみっともない光景なんでしょう。というか、脳みそまで筋肉なんですか。押してダメなら引いてみろ、簡単な話じゃないですか。どうして拘束されたら拘束具を破壊するという発想に至るかな」


 ……破壊しない、抵抗しない……? あの眼鏡……、まさか………。仲間にそんな事を要求するつもりなのか。


 「力を抜いて、自分の骨をワザと折らせて脱出すればいいんですよ。簡単でしょう、もしそれに合わせて力を抜くのだったら、その時に破ればいいんです」


 つまり自爆をして、全身の骨を折らせて擦るり抜けろと……。人間にそんな真似ができるわけがないだろう。確かに奴の回復能力で生き返るかもしれないが、激痛に耐えなくてはならない。悪霊じゃないんだ、人間がそんな捨て身の戦法ができるはずがないだろう。


 「ぐぬううう、うぅ」


 「どうしました、早くして下さいよ。言っておきますが、こんな無様な醜態を晒す馬鹿を私は助けませんよ。ご自分で自力で脱出してください」

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