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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十二話
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怪力

日野内飛鳥は正真正銘の天才だ、機関でも出世階段を駆け上がり機関でも重要なポジションに立ち、幾度となく危機的な状況を打破してきた。だが、今回は飛鳥が問題なく勝てるとは言い切れない。相手の強さは完全に未知数だからだ、百鬼夜行のメンバーを除いて、鬼神装甲を使える人間なんて見たことがない。飛鳥においては、こんな異例な光景を見るのは初めてだっただろう。


 「名乗ったからには容赦無しだ。まずはその細い腕をへし折ってやる」


 やはり単純な突進を繰り返した、拳を構えて飛鳥に向かっていく。ワンパターン極まりないが、これだけで勝てるのだから驚きを隠せない。


 「後手に回りましたか、いいでしょう」


 飛鳥の式神は一反木綿だ、スピードと捕獲能力に長けた妖怪だ。包み込んでしまえば人間の骨を潰すくらいのパワーもある。総勢十二体の連携攻撃は飛鳥が油断していない限り、無敵の性能を誇る。追継のように刀で反撃するのではなく、布で絡め取るために単純に拳と渡り合うなら都合がいいだろう。


 さっそく御札を取り出して瞬間的に一反木綿に捕まった。あまりに一瞬過ぎて見えなかった。上空に吊るし上げられると、そのまま手足を一本ずつ掴まれていき、すぐに身動きが取れなくされた。さすが飛鳥、牙を向いた相手には微塵も容赦がない。


 「くっそ、また妙な真似を……」


 「残念でしたね、地面に目晦ましに使えそうな物がもう落ちてなくて。あなたの大好きな一瞬の煌きが見れませんでしたよ、残念だったですね。てっきりそこの机でも持ち上げて投げてくるかなぁ、って予想していたんですが。傷を受けても復活するなら捕まえてしまえばいいんです」


 これで集結だ、呆気なかったな。状況的には大助かりなのだが、あんな馬鹿野郎にはとっとと退場して貰うに限る。まだ後ろには敵がもう一人潜んでいるのだ。さっきまでアシストするんじゃないかって不安だったのだが、まずは一人目を処理できて……たす……かっ…………てない!!


 「だから雑魚の朝知恵なんて取るに足らないんだよ。私は最強だ、このチカラで頂点に君臨するんだ。いただきへ上り詰めるんだ」


 あの怪力女め、一反木綿の拘束を力づくで破り切る気なのか。不可能だろう、昔の俺みたいに妖力が吸収できるならまだしも、ただの爆発的なパワーだけで一反木綿に勝てるわけがないだろう……。


 「鎧、堅いですね。私も握り潰すつもりで縛っているのですが、上手くいきません。仕方がありません、こっちも技を見せていきます」


 空中に浮いて旋回していた一反木綿に一体が攻撃に参加した。黒色の一番ドス黒いオーラを放っている奴だ。そいつは素早く宝記菖蒲の周囲を一回転すると、体積の幅をせまくし紐のように細くなってしまった。そして巻き付きに入る。まさか……飛鳥の奴……殺す気なんじゃ。


 「首を絞めます」


 「飛鳥!! お前、俺が知らないうちにそんな戦い方をしていたのか!!」


 確かに直接に関節部を狙う、もっと言うと『首』をピンポイントで狙うならば。奴に反撃はできない。確実に仕留められる。でもこれじゃあ飛鳥が殺人者になってしまう。


 「大丈夫ですよ、殺しまではしません。気絶させて縛り上げるだけです。これ以上のパワー比べは御免ですしね。彼女の土俵で戦ってあげる必要もないでしょう」


 確かに今は、細かい作戦を選択している暇はないのだが、飛鳥はやっぱり怖い人だって言う事が改めて分かりました。一反木綿の黒が彼女の首に巻き付いた。早く奴が力ずくでこの拘束を脱する前に奴を倒すんだ。


 「舐めるなぁぁぁぁぁぁ」


 攻撃に参加していた一反木綿が……少し破れた。まるで布がはち切れるかのように。まさか切られる……、こんな馬鹿な。ここまで単純にパワーだけで闘う奴は他にいなかったぞ。首を絞められて、意識は消えかかっているはずなのに。


 「あなたは気に入らない人ですが、その真っ直ぐな気質は評価してあげましょう。全力で絞首刑にします。……十二単じゅううにひとえ!!」

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