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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十二話
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主君

選ばれた人間か、つまり私たちは既に差別する側になったから、問題なく松林を主君に出来るという理屈か。気に入らないな、そういう安全地帯に避難するみたいな魂胆は。これが人間らしさだというなら、皮肉な話だな。


 「まあでもお前たちは言うほど人間らしくない。その醜い精神がお前らの人間らしさの限界だ」


 「何をいう、既に人間の資格を剥奪した者が」


 「なんというのかな、利得とか優勢とか条件とか、そういう安全を捨てて誰かのために闘う勇気とか。自分の信念を曲げないとか、正しい道を真っ直ぐ進むとか。そういう人間にしか出来ない格好良い部分が欠落している、って言いたいんだよ」


 遂に奴らが痺れを切らした、牛鬼の突進と共に鬼神装甲を持った女が廊下から応接室に突進してくる。後ろの女は後衛か、どんな手品をもっているのだろうか。だが、まずは前にいる二人を止めなきゃ。


 「全く、戦力にならないのに挑発だけしないでくださいよ」


 追継と鶴見が先手を取った、提灯お化けを巨大化させて一瞬で爆発させる。そのまま爆炎にて牛鬼を後方の廊下へ吹っ飛ばし、その奥の窓の外へ落としてしまった。牛鬼の体格では応接室の中に入るのはドアを破壊しても時間が掛かる。その一瞬の怯みを逃さなかった。


 もう一人の女は鶴見が抑えた、御札から瞬間的に双剣『下切雀』を取り出して、防御にかかる。相手もさっきの鶴見の起こした爆発でビビったのか、そのまま競り合いにはならなかった。ステップするかのように少し下がり、体制を整える。


 「牛鬼は図体ずうたいの割に素早いです。すぐに追ってきますよ!!」


 「まかせて、私が倒してくる。私も鬼神装甲の使い手だから引けは取らないよ。この場所にいるという情報が拡散する前に、一人ずつ確実に叩く」


 確かに鶴見の式神は広い戦場で的が大きいほうが優位だ。だが、牛鬼は水属性の妖怪だ。鶴見の式神である牡丹燈籠と提灯お化けは火属性、単純に相性が悪い。ここは別の人材を送り込んだほうが。


 「大丈夫、相性について考えているんでしょ。まかせて、タイマンなら誰にも負けない。地方の大型妖怪に負けるほど私の牡丹燈籠は弱くない」


 勝算があるとすれば、そこだ。牡丹燈篭の能力を使い、相手を封じ込める事だ。牡丹燈篭で本体を確実に行動不能にして提灯ロケットで牛鬼を叩き潰せれば十分に勝機がある。そこまで上手くいけばの話だが。


 「こんな狭い部屋でごちゃごちゃしてもしょうがないでしょ。相手に連携させないように、ここで小隊を分散させる」


 そう言うと、いきなり牡丹燈籠を体に一体化させて、鶴見は窓の方へ突進する。敵も一人一殺を心得たのか、威嚇する構えだけで飛び立つ鶴見を妨害しようとはしなかった。奴らの狙いは俺だ、俺が逃げ出さない限り、奴らも必要以上に行動の範囲を広げないだろう。だが、流石にパートナーを合流しなくてはは戦えないと判断したのか、牛鬼との契約者は窓から追うように消えた。


 「いいのかよ、お前らの仲間の一人が犠牲になったぞ」


 「それはあなた方も同じでしょう。そもそも我々は同じ巫女服を着ていますが、別に仲間でもチームでも同僚でもありませんよ。突入班として小隊は組みましたが、三人とも別の機関の出身ですから。正直、あの牛鬼を使う彼女。動きが多すぎて我々の『暗殺チーム』には不向きだったんです。いなくなってくれて助かりました。敵を一人巻き添えにしましたから、まあ及第点ですかね」


 暗殺……? なんだ、その妙にそれっぽい設定は。先ほどまで左後ろに引っ込んで黙っていた女が、急に楽しそうに話を開始した。よく観察してみると、三人の中で唯一、眼鏡をかけている。前のやつと違ってまだ憑依装甲していない。それと前の奴と一体化している妖怪はなんだ?


 「お兄さん、気をつけましょう。あの瓶底眼鏡女。嫌な気がします」

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