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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十一話
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君臨

奥の手なんて隠しているようには思えない、この人は実践的な戦闘力は全国でも最強なのかおしれない。レベル2の悪霊に何体囲まれたって、問題なく撃退できる強さを持っている。しかし、指揮官としての彼女は無敵ではない。作戦は短調で俺に頼る面もある、仲間には二名も裏切られて、実の夫にまで意見を共有して貰えず、こんな状況になってしまっている。


 切り札は最後まで取っておく物という習わしが流通しているが、これは俺達にとって最後と呼べる展開ではない。俺達の倒すべき相手は柵野栄助だったから。ここでリーダーのいう奥の手を利用するなら、仲間割れにより無駄に消費する切り札の無駄打ちだ。だから……ここで俺たちは柵野栄助に勝てなくなる。


 「さぁ、出ておいで。日本全国に君臨する『捕獲不能の大妖怪』」


 リーダーはふところから大量の百鬼夜行のメンバーが使う模様の御札を取り出した。これは俺達が本格的にレベル3の悪霊との戦いを開始する前にしていた作業である。捕獲不能の妖怪、元は烏天狗のような陰陽師機関でも不干渉になる地方最強の妖怪である。その圧倒的な強さ故に独特の考え方を持ち、人間を諦めた存在だ。


 「君たちと本当にこの場で一緒に戦える事を、私は誇りに思う。全力でぶつかろう。この場に柵野栄助を呼び起こす程の勢いで。これから起こるのは日本の存続を賭けた戦争だ、敗北なんか許されない。篭城戦になっている以上は戦術的には我々に分がある。唯の一匹も行弓君に触れさせるな!! 全身全霊を込めて目の前の敵を蹴散らせ!!」

 

 ここに日本の存続を賭けた夫婦喧嘩が始まった、音無晴香が勝利すれば俺は生き残る事が出来て、俺の体を回収する希望が出てきて、渡島塔吾が勝利すれば俺は死に、柵野栄助が死ぬ。そして松林が世界を支配……できないだろうから、また交戦が勃発ぼっぱつする。


 「さぁ、私の切り札だ。まさか君が計算に入れてないはずがないよね。渡島さん!!」


 学校の校舎に大きなヒビが入った、それは応接室から上の校舎が崩壊したのだ。俺達のいる応接室は二階にあり、この学校は二階建てなので校舎というか天井が叩き壊れたというべきか。そんな危ないものを校舎内で使うなよって言いたいのだが、そんな緊迫した死と隣り合わせの状況では言わない。でもこれじゃあ折角の篭城戦が意味がないと思うのだが。


 で、肝心の大妖怪はというと、最初からど肝を抜かされた。九頭竜くずりゅう、かの須佐之男命すさのおのみことが退治したと言われるヤマタノオロチの親戚みたいな妖怪である。水神とも呼ばれ九つの頭を持つ異形の大蛇である。肌は濃く黒みのある紫で、目は真っ白に発光している。髭は綺麗に整っており、もうその立ち振る舞いは竜そのものだ。


 続いて土蜘蛛、鬼の顔に虎の胴体、あとは蜘蛛がそのまま巨大化してくれたと思って貰えればいい。当然、九頭竜同様に原型オリジナルではないだろう。世間を騒がせた本物は、酒呑童子のように源頼光によって退治されているから。だが、日本には土蜘蛛が退治された後にも目撃証言は現代まで絶えない。悪霊化せずに妖怪のままで生き延びていた子孫だと推測する。


 一目入道、御上よつばの式神になった見越し入道同様に体の大きさを伸縮自在にできる入道系のお手本とも呼ぶべき妖怪で、今は俺たちと同様の大きさでいるが、きっと戦闘開始で巨大化するだろう。


 それと俺も直接にスカウトに関わった海坊主も登場していた。以前に俺がほぼ恐喝的な台詞で仲間にしてしまったやつである。今でも少し後悔している、過去のトラウマのひとつだ。海坊主達はやる気で目が煌めいている、俺のニートという言葉がまだ頭の中にあるのだろうか。この闘いが全て終わったら、誠心誠意を込めて謝ろう。古今東西のありとあらゆる見慣れない妖怪が肩を並べている。ここに烏天狗がいれば……あいつも少しは団体で闘う喜びを味わえたのではないか。そう感じるくらいに。


 「さぁ、妖怪大戦争だ!!」

 海坊主、まさかの五話から復活!!


 21話完!!

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