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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十一話
390/462

無法

 ★

 リーダーが合流した後に、飛鳥に内容を説明した。既に学校内に残っている人間は全て記憶を消去したらしい。五百機さんも話している途中に帰ってきた。飛鳥にはまずレベル3の悪霊の説明をした。綾文功刀、久留間点滅、面来染部、そして柵野栄助の能力や転末について。


 そしてその途中で俺が柵野栄助の媒体となり、姿が変わり果てた事。烏天狗の死去、火車や妖力吸収までも奪われた事。格納庫の希少種な魂がいくつか奪われた事。そして一番に重点的に説明したのは、松林力也という男の話だ。奴だけが地方の陰陽師を襲っていた事だ。そして、今回に俺たちを裏切り、俺を殺そうとしている理由も。


 説明しなかったのは、ただ一点。リーダーの名前は音無晴香ということや、二代目振払追継の母親である事、緑画高校の理事長が夫である事、そして彼女もまた俺と同じで悪霊である事などだ。ここまでは鶴見牡丹も把握していない。俺の憶測だが、五百機さんは知っていると思う。


 飛鳥も徐々に話を受け止めてくれて、今の笠松の陰陽師機関の状況説明をしてくれた。簡単に説明すれば無法地帯になったらしい。本部は勿論のこと、他の陰陽師機関との一切の接触を断ち、所謂いわゆる引き籠もりのパターンになった。松林の名前をヒントに、過去の経緯を思い出した連中がいたらしい。おかげで一度、松林の人間的な本質を見抜き、王のうつわではないと判断したらしい。


 他の連中で松林に従おうとしているのは、決まって今までに松林に襲われた事のある機関だそうだ。典型的な武力による恐怖政治である、今までの世直し活動をそんな事に利用するなら台無しだって話だ。


 圧政によって人々を支配した事など、古今東西の全ての歴史において一つたりとも存在しない。人間は恐怖では永遠にはなびいたりしない、一時的に支配しても必ず綻びが生じる。圧政では部下との信頼関係が成り立たず、たった一つの作戦失敗で信用を全て失うからだ。奴の計画が破綻するのも時間の問題だ。


 問題はこのタイミングで事を荒立てたことである、こっちは忙しいのに余計な手間を増やしてくれたって感じだ。リーダーは漁夫の利とか勝手な事を言っていたが、俺にはそう上手くいく未来ビジョンがイメージできない。


 話は戻るが、リーダーは飛鳥の協力を素直に受け止めた、むしろかなり歓迎していた。人材はいくつあっても足りない、強力な助っ人だ、そんな言葉を言っていた気がする。俺には飛鳥を戦いに巻き込んでしまった自分の弱さしか、心に残らないのだが。だが、いきなり戦闘になったりしないで助かった。


 この学校の潜伏のために正式な理由をつくるという名目で、部長こと久世飛鳥の記憶消去も延期となった。オカルト研究部の活動記録として、本物の陰陽師さんと触れ合おうみたいなニュアンスらしい。これで何か学校側に発見されたとしても面目が立つ、いや立たないと思うけど。教育委員会とかに見つかったら終わりだと思う、学校側に許可なく夜に出入りしている事などが容認される理由にならないからだ。


 というか部長も何を嬉しそうに、俺たちをかくまっているのだ。巫女服をきているのなど、フード姿の追継だけだ。皆、ごく一般的な服装をしている。陰陽師かどうかなんて判断しようがない。お偉いさんに見つかったら、お前が怒られるんだぞ、責任はお前にあるんだぞ~、って言わない。俺のつまらない偽善者の精神で作戦を台無しにはできない。ここは我慢だ。


 だが…………どうしてだ。


 「リーダー、何故こんな人数で何をするんです?」


 オカルト研究部の部室は狭いという事で、ここは応接室である。どこからか、リーダーは電気鍋を取り出すと、勝手にコンセントに繋ぎ温めはじめた。残りのメンバーも何食わぬ顔で野菜を切ったり、具を用意したり、火加減を調節したり。


 「いやぁ、すっかり夜も更けたし……みんなで食事にしようと思って」


 「緊張感が無い!!」

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