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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十一話
386/462

主張

 「で、この部室にやって来た理由は何ですか? 何か目的があってやって来たのでしょう」


 「待て。その前に何でお前がこの部屋にいるんだ!! お前は別にオカルト研究部の人間ではないだろう」


 俺がこの危機的な状況を作ってしまった失態の原因を知りたい。このままじゃ気分が悪いのだ。いや、おおよそ飛鳥がこの部室にいる理由は見当がつくのだが。果たして飛鳥からしてみれば、完全に初対面の俺に内容を話してくれるだろうか。


 「………あの、どちら様ですか。私はあなたの事は知らないのですが。新しい百鬼夜行のメンバーと考えて宜しいのですか。先ほどからオドオドとなさってますが」


 オドオドしているように見えているのか、俺は。まあ予想外の事態に混乱している事は否定しないが。ここは鶴見の任せず、自分で橇引行弓であるという事を主張しなくてはならない。


 「飛鳥、もう面倒だから言うぞ。俺は実は橇引行弓だ。とある事情で体を悪霊に奪われて、今はこんな姿になってしまったのだ」


 ……追継と部長のやり取りは続行していたが、俺たち三人の中に十秒間ほどの沈黙が長続きしている。鶴見は自分の過ちをストレートに問い詰められたショックで会話に加わる気はないらしい。それで、俺だけで飛鳥に説得を試みなくてはならないのだが。


 「なるほど、遂に行弓君は除名されてしまいましたか。それで代わりの人が入ったわけですね。どうせ駄目人間だったあの人ですから、百鬼夜行でも任務に大きな失態を犯した挙句に、下手な言い訳をして憤りをかって……、今はどっかで事務作業をしているのですね」


 まあ百鬼夜行に入る前の俺の素行しか知っている飛鳥に、俺の努力は垣間見ていない奴には分からないだろう。まあ綾文功刀の時に柵野栄助を復活させてしまった失態を考えると、ちょっと反論しづらい面もある。


 「違う、本当に俺は橇引行弓なんだ。信じてくれよ」


 「そうですか、ではそういう事にしておきましょう」


 こいつ、もう俺を本当に橇引行弓かどうか疑う気持ちとかないんだな。完全に俺を別の人物だと思ってやがる。普通はこういう場合には、自分たちしかしらない過去の思い出を言わせたりとか、身体的な特徴を言わせたりとか、そういう会話になるだろう。考える事を拒否している以上はどうしようもないじゃないか。困ったな、せめて少しでも俺なのかと疑ってくれないと、話が進まない。


 「初めまして、百鬼夜行の新人さん。どうやら行弓くんの抜けた穴を塞いでいるようですね。私と同じで」


 私と同じ……って事はやっぱりか。飛鳥は俺の代わりに人材不足となったオカルト研究部に入部したのか。部長は村正先生との修行でかなりお世話になっている。だから恩を仇で返せないという配慮か。


 「こんな夏休みにまで職場にいないって事は、なんか機関の中でお前にあったのかよ」


 「えぇ、ちょっと。ここには謳歌さんもいるので、大声は控えて下さい。ですが、あれだけ集中してデッサンしているなら問題ないでしょう。言って支障が出る事だとも思いませんし、教えてあげます。私は無断で御門城に出向いた事がバレてしまって……、今は暫く謹慎の命令が出されているのですよ」

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