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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十一話
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土壇場

「それでこれからどこに向かう気なんだよ」


 ここからの俺達の動きが重要になってくる。俺たちは松林と柵野栄助との戦いを出来るだけ安全な場所で暫く傍観しなくてはならない。それでいて、笠松陰陽師機関の連中から怪しまれないようにしなくてはならない。この町にそんな隠れ家のような都合の良い場所はないと思うのだが。


 「もしかして烏天狗のいた山とかですか?」


 それが一番ダメなんだよ、鶴見牡丹。もしかしたら移動しているかもしれないが、奴がまだ地点を移動していなかったら、奴は必ずそこにいる。あんな危険地帯に出向く訳にはいかない。そして、鶴見は恐らく烏天狗が死んだ事を知らないのだろう。


 「逃げる場所なら決まっている。もうすぐ到着するから安心したまえ」


 リーダーの言葉を信じる、きっと俺達に都合の良い場所なのだろう。だが、既に結界班から見張られているであろう俺達が、どこに逃げ込めるというのだろうか。今は車の中で移動中なので下手に攻撃はしてこれないとは思うが。動きを止めたら、奴等に隙を見せる事になる。


 「大丈夫です、お母さんは自信がない時はあんな態度を取りませんから」


 俺はまだ悩んでいる、この町で戦う事を。この町は恨みこそあれ俺の大切な場所だ、こんな場所で戦ったら本気で戦えないではないか。俺は土壇場で誰かを庇ったり、建物を庇ったりしてしまうのではないか。俺が元々、百鬼夜行に入ったのはこの町を守るのが理由だし。


「おや、どうやら到着したようだ。ここで僕らは身を潜める事になるよ」


 後部座席の左の窓側に座っていた俺が、一番最初に車を降りた。とにかく逃げ込む場所がどこなのか気になったからである。そこは俺がよく知っている場所であった。


 「学校……俺が生活していた学校!!」


 聳え立つ校舎が俺を出迎えてくれる。夏休み期間に入り、部活動でした使われなくなった校庭。そして静けさ漂う殺風景な教室が窓から透けて見える。俺はこの学校に六月に退学して、緑画高校に転入する事になったのだ。


 「そうだ、ここは行弓君が以前に登下校をしていた学校である、笠松高校なのだ」


 なるほど、考えたな。学校は公共施設であるからして、人が集まりやすい。陰陽師が戦うにはあまり適さない空間だ。陰陽師は学校では、丸っきり自由に戦闘を行えない。授業中に騒動を起こせば何人もの生徒を避難させなければならないか、分かったもんじゃない。そして本物を見るまでは信じない奴が、その場を動かなかったする。結果、被害が悪化する。


 陰陽師は細心の注意を払って悪霊が学校などの人が集まりやすい場所に飛び込まないようにしている。それか放課後に大勢で囲んで、即効でケリを付けたりとか。元々、悪霊は人が集まる場所にいる生息があるので、学校は本当に面倒な場所なのだ。


 そこを逆に利用して潜伏するってわけか。さすがはリーダーです。作戦的には上の上だと思うが、実は俺は個人的な感情で気乗りがしない。だってこの学校には、例え夏休みだろうとお構いなしに部活動をやっている、オカルト好きの変人がいるのだから。

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