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特に何もしない陰陽師  作者: 太刀風居合
第二十一話
381/462

無難

帰ってきた、俺の育った町に。笠松町は妖怪のいる地域の中でもかなり神聖されている、百鬼夜行は内部崩壊とは言わないものの、ちょっとマズイ事態になっている。松林力也という男が百鬼夜行を脱退してしまったからだ。理由は、衰退した陰陽師機関本部を乗っ取り、自分が陰陽師の頂点に立つためだ。


 そしてやつは俺の命を狙っている、俺が死ねば最強にして始まりの悪霊である柵野栄助を殺す事ができるからだ。自身が陰陽師の頂点に立つ上で、最高のアピールになる。だからこそ、俺達はこの笠松町に逃げてきた。


 「で? 今からどこに行くんですか? リーダー。やっぱり助けを求めるために、柵野栄助のもとへ行く感じですか?」


 「いや、あいつには近寄らない方が無難だろう。あいつがどんな手を使ってくるか分かったもんじゃないからね」


 そうだな、奴に近づいた瞬間に意識のみの状態にされ封印されたのでは、溜まったもんじゃない。だが、いつかは戦わなくてはならないだろう。俺は俺の体を取り戻さなくてはならないからだ。


 と、いう訳で笠松町に到着である。ここで注意しなくてはならないのは、恐らく俺達がここに侵入したのは、奴らに間違いなくバレているであろうという事だ。以前に鶴見がこの町に潜入した時も、偉く慎重に観察されていた。今回もターゲットロックオンされていると考えたほうがいいだろう。


 松林が新しい陰陽師の最高責任者だと認めている機関など、存在しないと思うので、松林の撃退命令に従うとは思えないが。俺たち、百鬼夜行は以前の最高責任者である阿部清隆を殺害した犯人だと誤解されている。それが原因で攻撃は有り得る話だ。それか松林が上手く嘘を言って、周囲の機関をコントロールしているとか。


 気に入らない、本来的に全国の陰陽師機関を攻撃していたのは、紛れもなく奴だ。俺たちは危害など加えていない。奴は自分の犯してきた汚点を全て俺達にイメージとして押し付けて、自分は逃げやがったのだ。奴の薄情物という言葉を送ろう。


 「おっと、もう監視されちゃっているか。構わないな、皆も気にしなくてもいいよ。あの御上みかみよるべさんの事だ。そう簡単に作戦を実行には移さないだろう、腰が重い慎重さが彼の特徴だからね」


 そうだろうか、鶴見の一見で考えを改めているかもしれない。この街は鶴見のよって崩壊しかかったのだから。俺たちを直様すぐさまに対処してくる可能性だってあると思う。そう言えば思い出したが、鶴見の件で攻撃してくる可能性もあるな。本当にこの場に逃げ込むのが、正解だったのだろうか。


 「はぁ~、私がまたこの町に帰ってくるなんて。罪悪感で心が押し潰されそうな気分だよ」


 「私もあんまり良い思い出がないです。お母さんもでしょう。この場に帰ってこれて嬉しいのは、お兄さんくらいですか」


 本当にそう思うか? 俺を屑呼ばわりして、個室に閉じ込めて事務作業をさせられた恨み。俺を役立たずだと言って切り捨てた恨み。陰陽師もどきだと言われて罵られた恨み。そして、百鬼夜行に加入し、仲間である日野内飛鳥を裏切った事への罪悪感。一言では言い表せない苦しみが俺にだってある。


 車の中から窓を覗いた、昔から知っている光景が目に映る。帰ってきたのだ、俺はこの町に。戦うために。

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