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敵対心

 俺に奴を攻撃する手段はない、だがこれで攻略法は分かった。俺がもし以前だけの妖力と式神がいたならば、奴を倒す方法があっただろう。


 「しかし、ですね。私にはもうあなたしかいない事は確かです。それにあなたは悪くない、私の復讐対象は緑画高校の方々か柵野栄助でしょう。あなたも被害者だ」


 「『被害者』か、現代人の大好きな言葉だな。でも今の俺はそんな物じゃない。例え復讐だろうが、自分の欲望や計画のためや、誰かを守るためだったとしても、どんな理由だろうと、戦いに正義なんかない。負けようが、滅びようが、死のうが、被害者とは呼ばれない」


 被害者とは一度も反撃をしなかった人間をしなかった奴の事を言う。威嚇だろうが、挑発だろうが、攻撃を加えた時点でそいつも悪人だ。相手が悪霊だろうが、下衆野郎だろうが、戦うならば俺も『悪』だ。陰陽師は正義の味方じゃない。


 「俺は被害者になりたいんじゃない。不慮の事故に巻き込まれた可哀想な人間になりたいんじゃない。戦うんだ、これから最終決戦に行かなきゃいけないんだ。俺は死なない、戦う罪を背負ったまま生きていく。死んだなら、これまで迷惑をかけた人に詫びながら、地獄の業火に焼かれるだけだ!!」


 それでも戦いの場から逃げ出すわけにはいかない。俺にはまだすべき事がある。


 「いいのですか、私に頼れば……逃げられるんですよ。最高とは言わないまでも、それなりの幸せで妥協できます」


 「うるせーよ、人間には絶対に逃げちゃいけない戦いがあるんだ」


 ★

 拘束を解いてくれた、まるで戦意を喪失したかのように、項垂れながら。こいつは下手にあらゆる可能性を示唆できる事から、信じ込まないという現象は起きなかった。よくあんな演説を聴いてくれたと思う。


 他のメンバーもそんな奴を攻撃しようとは思わなかった。いや、回避されるからという事もあるが、なんか奴は倒すべき敵に見えなかった。


 「あの……私を、殺さなくていいんですか。私はレベル3の悪霊ですよ」


 「そう思うなら、自滅してくれよ。安心しろ、お前は柵野栄助を始末して、松林の馬鹿の動きを止めたら、スグに殺してやる。お前を特別に許してやるつもりはない」


 リーダー、やめてあげて下さいよ。折角、見逃すんだから。もっと気の利いた事を言いましょうよ。そんな調子だからあなたは奴に攻撃を当てられないんだ。


 「行弓さんの事は諦めます。私の愛した彼女でないのは、しっかり分かりましたから。何より、本人の意思を尊重したいと思います。これから私は、単独で松林力也を搜索して彼と戦います。私の彼女を殺した奴はきっとその団体にいるでしょうから。その前に緑画高校に寄って、理事長さんと相良十次さんという方にあわなければ、具体的な話を聞かないと」


 あんた本当に恐れる物とかないんだな、まあ奴の回避能力を攻略できる奴なんか、そうはいないと思うが。まあ相良あたりには無理だ。才能がないとかじゃなくて、コツを掴めない。


 「おい、面来染部」


 そう言うと、俺は奴の頬を叩いた。パシッっといい音を鳴った、そして奴は顔を抑えた。やはり奴の絶対回避信号は攻略できる。


 「当てた!! 行弓くんが攻撃を当てた!!」


 「どうやったのですか? どうしてあなたは……」


 絶対回避信号の攻略法。思えば簡単だった、奴に厄災ではない攻撃を放てばいい。奴の事を思い、奴を叱りつけ、奴を救う気持ちがある。これは奴に取って不慮の事故ではなく、必要な罰だ。この姿が殺された女子高生の姿をしているのも影響していると考える。


 「これは今から無茶をするであろうお前に対する、バカ野郎って気持ちだ。お前に対して憎悪や敵対心を込めて放ったんじゃない。だから不慮の事故じゃないし、お前に取って厄災でもない。だからお前を本当に殺すつもりなら、『面来染部を救う、成仏させてやる』って気持ちを込めて戦わないと、そもそも勝負が成り立たないという魂胆だ」


 敵対心を捨てる、憎悪を捨てる、そして戦う。こんな真似をしてでも戦える人間はそうはいない。そんな奴は間違いなく、町でヒーローと呼ばれて崇拝されている事だろう。

 

 もういいだろ、こいつは。もし一人でも人間にチョッカイを出した時には、俺が愛情を込めてこいつを殺す。今は奴が俺の意思を尊重してくれたように、俺も奴の言葉を尊重するだけだ。

 

 「じゃあそろそろ行きます。お手数をおかけしました」


 「最後まで五月蝿いよ、とっとと消えろ」


 これで良かったなんて思っていない、俺たちは奴を退ける事でようやくスタートラインに立ったような感じだ。これからが本当の戦いだ、そう面来染部の過ぎ去る背中を見ながらそう思った。

 第二十話、完!!


 面来染部、倒さなくて(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン


 でもあとちょっここいつは使うんで


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