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 駄目だ、奴の突進を止める事はできない。やつに攻撃を与えられない以上は俺が逃げるしかないだろうか。だが、単純に脚力で逃げ切れる相手だろうか。


 「なるほど、大した回避性能だ。能力の仕組みがわからない以上は手の打ちようがないな。だが、久留間点滅の時に有効だった対処法を利用させて貰おう」


 まだ攻撃をしていないリーダーが俺の傍まできていた。リーダーは他のメンバーの攻撃が当たらない事を予知していたのだ、自分が安全に俺の前まで来るための布石か。


 「こうやって密着してしまえば、君は私と戦わずに行弓君を拐う事はできない。接近戦でも回避能力は発揮するだろうから、私は君に攻撃を当てられないかもしれない。だから、これでお互い目的は達成しえない」


 いや、リーダー。それは考えが甘いんじゃないか。奴は久留間よりも狡猾で隙がない野郎だ。対等くらいの条件だったら安心できない、あれだけ想像力が巧みで、状況対応能力のある奴のことだ。この程度のピンチは想定内だと思う。


 「まあ普通はそうしますよね。回避専門の相手に時間制限があって『数撃ちゃ当たる戦法』を使う人はいませんよ。ですが、まだまだですね」


 奴が遂に攻撃に徹した、遂に俺の目と鼻の先まで来たのである。肩に巻いていた毛皮のマフラーを外すと、そのまま鞭のように蛇状に波打たせてリーダー目掛けて振り切った。日常生活に使う防寒グッズをなんだと思っていやがる。というか、そんな物で人を叩くなんて小学生かよ。俺も昔に友達とやって、マフラーがヨレヨレになって母親から叱られたなって、そんな事を言っている場合じゃない。


 「それで鞭になっているつもりかよ。子供の喧嘩じゃあるまいし。馬鹿にするな」


 「いや、馬鹿になんかしてませんよ。これでいいんです」


 リーダーは瞬時に下切雀を抜き、マフラーを叩き切った。双剣であったために、マフラーは三分割される。面来染部は顔色を変えずにそのまま俺の方に手を伸ばしてきた。


 「させるか!!」


 リーダーが俺の腕を左手で握った、下切雀を握っていたがためにその柄が当たり、俺の腕には少量の痛みが走る。そして右手で奴の伸ばして来た腕に向かって一閃を浴びせる。これが当たるとは思っていないだろうが、奴が一旦離れさせるのが目的だったのであろう。


 これで面来染部が頭脳戦でリーダーに勝利した。伸ばした手が一太刀ひとたちを躱すために手が急速転換した。奴はなんとそこで逃げるどころか、リーダーが握っていた俺の腕を拳で跳ね飛ばしたのである。掴みが甘かったのは言うまでもない。間に日本刀が挟まっていたのだから。


 下切雀は地面に転がった。面来染部は次の行動としてリーダーを蹴飛ばした。右足の靴底でリーダーの腰を思いっきり突き飛ばしたのだ。真面に受身の体制を取っていなかったリーダーは地面に倒れこむ。奴はここまでを読んでいたんだ。マフラーはやはり囮で、始めから『二本揃わなければ意味のない双剣』である下切雀を抜かせる事が目的か。


 マフラーは毛糸だ、鞭ではない。だからこそ、この作戦が成功した。本物の鞭だったら一本で事が済んだかもしれない、下手に切り落とそうと考えず、鍔迫り合いにしてガードにしたかもしれないから。だが、マフラーだったから、どうするか対処に悩んだ、一瞬の判断の困難さが生まれた。


 何か特殊な効果のあるアイテムかもしれない、何か特殊な動きをする武器かもしれない。そう思う事がリーダーを『全力によっての対処』を促した。そして見事に作戦に嵌まった。


 「音無晴香さん、あなたは確かに戦士として優秀だ。でも……だからこそ経験によるミスが発生する」

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