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円陣

 奴は柵野栄助が好きじゃなかったのか、この俺の意識が入り込んでいるこの体が好きだったのか。言い方から何か思い入れがあるようだが。とにかく、俺にはお断りだ、こんな不審者と一秒でも一緒にいたくない。


 「それで? どうせその後は、自分の回避能力を利用して行弓君を守るから、こちらによこせとか言うんだろう」


 「おぉ、ご明察です。そこの青髪のお方。私のすべき事はいずれ戦場になるだろうこの地から、彼女を少しでも遠くへ逃がす事です。ですから私はあなた方に『橇引行弓を譲って貰う』交渉をしに来たのです」


 残念だったな、そんな頭の悪い交渉に乗るつもりはない。奴の話した論理には致命的な間違いが二つある。まず、『自分が裏切った』事への証明をしていない事だ、俺を強奪したのちに柵野栄助に献上しない事への詳しい否定理由になっていない。こいつに限って信頼なんかないしな。


 次に松林力也と柵野栄助の標的は俺な以上は、俺が笠松町からいなくなる以上は戦地も移動するのではないか。俺が笠松町の何処かに隠れていなければ最終決戦の意味が無い。


 「ふっふっふ、分かります。私の事が信用なんかできないんですよね。ですので、私の話を続けさせて下さい。まず、あなた方は『この作戦には橇引行弓が必須だ』とお思いでしょうが、ちょっと発想が間違っているんじゃないですか?」


 何だと、俺がいなくなったら戦う理由が無くなってしまうじゃないか。


 「松林力也氏と最後に離れたのは御門城ですよね、ですから彼は具体的に橇引行弓の変わり果てた姿がどんな物か目にした事はないんです。意識を除き、元の橇引行弓と一致している点なんて一つもありません、妖力ですら違いますから。以前の普通の女子の恰好をさせておけば、それを橇引行弓だと断定できるはずがないんです。寧ろ、あなた方で円陣を組み取り囲んで、いかにもここにいるぞってアピールする方が、よっぽど敵に居場所を知らせると思います」


 …………確かに、奴の言う通りなのかもしれない。松林は俺がどんな容姿をしているかなんて知らないのだから。俺を詳しく追って来て、追跡する真似なんかできないのだ。超人的な力を持つレベル3の悪霊のこいつらは追ってきた訳なのだが。


 「ではどうして松林力也は、笠松町に橇引行弓がいると断定しているのか。多分、スパイを上手く利用しているんじゃないかな。スパイに『私には百鬼夜行を追跡できる力があります』とか言わせて敵の居場所の割り出し係にさせて、それを逆に利用して奴を決戦の地まで誘き出しているって寸法ですよね」


 そう言えばリーダーは、ダモンをワザと御門城に置いてくるとか言っていたな。それを利用して誘導するとも。ここまで細部の事情までもバレているなんて。こいつはいったい何者なんだ。


 「面来染部、流石は柵野栄助の次に厄介な悪霊なだけはあるな。よく調べているし、お前の発想力と想像力には恐怖を感じるよ」


 「これは、偉大なる純粋な戦闘技術なら最強の悪霊でございます音無晴香様からお褒め頂けるとは、光栄に存じます。しかし……それはまるで、私の事が信用できないとでも、言いたげですね」


 全くその通りなのだ、奴が情報収集能力や想像力を見せつける度に、俺達はこいつを信用できなくなる。もしこいつが嘘をついていた場合に、取り返しのつかない事態に陥るから。

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