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頓珍漢

裏切った? 自分を生み出した存在であろう柵野栄助を? 

 

 確かあいつは仲間を大切になどしていないし、心は完全に廃れていると思うのだが。果たして残り二人になったこの状況で、裏切っていいのか? いくら奴には完全回避能力があったとしても、奴を迎え入れる機関なんかないんだ。天涯孤独で陰陽師から殺される事から逃げるみたいな将来を歩みたいのか?


 そもそも、奴は柵野栄助を溺愛しているんじゃないのか? 緑画高校なんて最高峰の危険地帯に単独で潜り込んで、能力を捨ててでも奴の復活を懇願したり。柵野栄助が復活した時に一番に格納庫まで助けにきていたりしていた。奴の愛がイマイチ分からないんだが。


 「お前の意図が分からないな。どんな考えでそんな頓珍漢とんちんかんな事をしているんだ? お前は。全ての意図が分かった上で我々を騙すつもりか」


 「騙すなら、『全てを知っている』みたいな事実確認なんかするはずがないでしょう。とにかく騙すなんて真似はしないですよ。ただ私と柵野栄助では大切にしている物が違うんです」


 大切にしている物? 柵野栄助の大切な物は……自分の命とか、他人の不幸を楽しむ事だろう。じゃあこいつにとって大切な物ってなんだ? 以前までは柵野栄助の存在だと思っていたのだが、そうではないのだろう。


 「じゃあ、そのお前が大切にしている物って何だよ」


 「えぇ、それはですね……」


 …………ん? 俺の方を見ている? 


 「何だよ、俺がどうしたっていうんだよ」


 「いえ、私が一番、大切にしたいと思っている物は『彼女』なんです。私はずっと彼女の事を愛して止まないのです」


 …………はい? 俺? 奴が大切な物は……俺?


 なんだろう、この吐き気を催す気持悪さは。他の四人もあまりの予想打にしない変な発言に、呆気を取られている。俺は紛れも無い男だ、それ以外の何者でもない。ただ今は奴に体を乗っ取られてしまい、仮の姿を保っているだけだ。それを……俺を愛している? 冗談じゃない!!


 「お前……同性愛者だったのかよ!!」


 「違いますよ、何を言っているんですか。私は彼女の『容姿』に惚れ込んでいるのです。その花弁のように美しい姿、桜色の似合う華やかな顔、私は生まれてからずっと彼女の事が大好きだったんです」


 容姿に惚れ込んでいる? いや、一般的に考えて逆だろうが。普通の恋愛小説とかでも、その人の性格とか人情とか、どちらかと言えば『魂』の方を好きになるもんじゃないのか。こういう奴の事を何ていうんだっけ? 面食い?


 「ふざけるな!! 何が『容姿』が好きだよ、この変態め!!」


 「どうして批難されるんです? 容姿が好きで始まる恋愛の何が悪いんです? 勘違いしないで下さい。私は『可愛ければ、何でもいい』なんていっている淫らで低俗な連中とは違います。私はあなたじゃなきゃ駄目なんです。もし魂が変わってしまったとしても、私はその魂ごと愛しましょう」

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