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こうして俺は無事に百鬼夜行のアジトまで辿り着く事ができた。まさか緑画高校から帰る道中に、襲われるとは思っていなかったが、どうにか切り抜けたのは良かった……と思っている。


 アジトへの玄関の前に俺は足を止めた、そう言えば皆は無事だろうか。鶴見と追継があれからどうなったか、分からないままだ。ダモンと松林は御門城で戦っていたらしいが、……あいつらは大丈夫だと思うが。


 「帰ってきたんだな、俺は。ここに。俺は今のこの姿でも、百鬼夜行の仲間なのだろうか」


 久留間点滅を倒したところで、根本的な問題は何一つ解決しない。このまま放っていれば、また奴がレベル3の悪霊を量産し続ける。今の残りの二人の状態で全滅させれば、世界は平和になるって物なのだが。


 『回避』の面来染部と、『憑依』の柵野栄助。両名とも厄介を通り越して、もう倒す兆しが全く見えない。あの二人に久留間点滅のような致命的な弱さはないし、綾文功刀のような心の揺れも無い。一方はどうにか倒す方法があるが。


 「ただいま~、皆ぁ。ちょっとシューゴー!! 会議するから部屋から出てきてね!!」


 俺に手持ちの代物はない、バックを置く仕草も必要ないので、すぐに会議に使うであろうロビーに移動した。五百機さんが俺をまた慰めようとしていたが、無視した。今から始まる議題について話し合う事を考えると、少しも心の安堵を感じる余裕なんかなかったからだ。


 俺を『殺す』か、『殺さない』か。まあおおよそ全員がどんな反応をするか。


 「行弓君。大丈夫かい。服を着替えようか。いつまでもその女物の着物じゃ動きづらいだろう」


 「いいです、後で着替えを貰いにいきます。男物でいいんで。今は少し静かにさせて下さい。会議についても何も語る気はないんで。隅で話だけ聞いておきます」


 「では、何か飲むかい? 夏だから外は暑かっただろう。今スグに冷たい飲み物を用意するよ」


 「いいえ、いりません。本当に気にしなくていいんで」


 久留間点滅を倒した事で俺が元気を取り戻したと思ったら大間違いだ。奴を倒す事に貢献したつもりはない、俺が思いついた必勝法くらいリーダーでも数分後に気が付いただろう。奴を倒す為に隙を生み出す為に、俺は餌になっただけだ。


 ソファーに腰を掛けた、自分の部屋に戻らず五百機さんが俺のすぐ後ろに立っている。だが、振り返って会話をする勇気など湧いてこなかった。五百機さんの憐れむ顔なんか見たって悲しいだけだ。俺を守ろうとしてくれた事は、感謝しているが……そうしても彼女の残したキーワードが頭に残る。『天秤』だ、果たして俺が『死ぬ』事と、『生きる』事の、どっちが価値があるだろうか。


 傍に命を狙われる恐怖心と、監獄に閉じ込められる絶望感、そしてもう戻ってこない肉体と親友の魂。俺は失ったものを何も取り返せてはいない。全ては柵野栄助から奪え返せるだろうか、何一つ保障などない。


 「俺はいったい……」


 また虚脱感で気力を失い下を向いて涙を堪えていると……ドアが開いてまずあいつが姿を現した。


 「あなた………。いったい誰?」


 「鶴見牡丹…」

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