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献上

俺はこいつを信用する事はできない、今の発言に間違いがあったとかは思っていないし、俺が生きている事が正しいかどうかなんか分からない。しかし、奴等の仲間になるという決断はやっぱり出来ない。掴まってまた柵野栄助に意識だけの世界に連れ込まれるわけにはいかないのだ。自分が可愛いからこそ、俺はこういう決断をしている。


 「俺はやっぱりお前を信用なんかできない、俺の親友はお前達に殺された。俺は意識のみの状態で監禁生活までさせられた。そんな連中を信用なんか出来るか」


 「あぁ、成程。信用できないと言うのか。気持ちは分かるけど、ここは割り切る判断をするべきだった。残念だね、これがラストチャンスだったのに。君が心から仲間になるという意識が無いならば、仲間になんかしなくていいか。意識だけという世界に閉じ込める事が可能かどうかは知らないけど、君は絶対に死なない状態で拘束させて貰おう」


 あぁ、お前達なら俺をスグに諦めると思ったよ。綾文功刀を見捨てたように、こいつらは実は仲間意識なんかない。ただ都合の良い連中が攣るんでいるだけだ、小学校のいじめグループと何も変わらない。


 「だからお前達は悪霊なんだよ」


 愛さないから、愛されない。大切にしないから、大切にされない。どいつもこいつも自分が可愛いだけの存在だ。だから傍から見ていて、気に食わないんだよ。


 久留間点滅の下の方の口が喋るのを止めた。五百機さんを攻撃している上の口と同じように、攻撃に利用する気なのだ。概ね狙いは把握している、恐らく俺を吸い込んで体内にでも確保して、生きたまま柵野栄助の元へ献上する気なのだろう。


 ここまでか…………。


 「じゃあ、ばいばい。悪霊になりきれなかった陰陽師さん」


 それでも……………。俺は、人間でいたいんだ。お前達みたいな存在になりたくないから……。


 「ぐっぅ、ぐぅ、……がぁ」


 俺が呑み込まれる事を覚悟して目を瞑ったその時だった、奇跡は起こった。俺は目を瞑っていたため、音しか聞こえなかったのだが、その残酷な音だけはしっかり聞こえた。恐る恐る目を開くとそこには俺の知っている奴の姿は無く、奴は微塵切りの如く、体を手の平サイズに解体されていた。深海魚のような容姿の悪霊である久留間点滅は……空中で死体になっていたのである。この斬撃は……リーダー、音無晴香だった。


 「ぐぅ…ぅ、ぅ、ぅ、ぅ」


 途端に二つの口の攻撃が止んだ、五百機さんは地面に倒れて、俺はその場に倒れ込んだ。俺の傍で地面に降り立ったリーダーは空中で、虚しそうに悲鳴をあげている久留間点滅の死骸に向けて、刀を翳した。舌切雀の能力で片方を『この世で最も鋭い刀』にしたのか。あんだけ体をバラバラにしたのに、片方しか利用していないとは。倒したのか、奴を。


 「リーダー、油断しないで!! 奴はまだ体内に妖力を持っています。直ぐに体をくっ付けて復活しますよ!!」

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