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刺激

霧を実体化させる五百機さんの能力の弱点は、いくら目に実体化したように見えても、結論的に水の塊に変わりは無い事である。それは偽物であり、紛い物であるからして、威力が無い。


 「はっはっは、お姉さん。そんなに睨み着けないでよぉ。怖いなぁ。僕は確かに最強の防御能力者だが、攻撃が全くできないって訳じゃないからねぇ。実はこの『吸い込んで、吐き出す』能力はかなり理に叶っている能力だからね。だって空気の圧力を突破できる手段なんかないだろう。何も寄せ付けない絶対防御なのです」


 絶対防御か、面来染部の時も絶対回避とか言って自慢されたが、こんなに腹は立たなかった。あの人の自慢は本気でこっちを諦めさせて、戦闘意欲を削ごうとするのが目的だったから。奴はなんか本当に馬鹿な餓鬼が親に高価な玩具を買って貰って、学校で自慢しているちょっとウザい奴の顔だ。油断というのか、慢心というのか。こいつ本気で精神的に成長してないんだな。


 陰陽師の跡取りとして甘やかされた阿部清隆と良い勝負だ。こいつの場合はまだ一人で自立しているけど。人間って『律する』事を止めればこんな醜い姿になるんだな。多少は厳しくて理不尽なくらいが丁度いいっていうのが、亡くなった我が祖父の教えてくれた教訓だった。俺もそんな面倒な教訓は理解を拒んだけど……。


 「つーか、リーダーはどうしたんだ? あの人は確かレベル3の悪霊を何人も倒しているんだろ。分断されたっていう事は、誰か別の野郎に足止めさせられているのか?」


 「可能性としては高いけど……、三人しかいない奴らがいったいどうやって。足止めなんて考えられるのは、柵野栄助か面来染部だけだろうけど……」


 ……柵野栄助か? 一歩間違えれば、機関の連中が俺を殺しかねないこの状況で、そんな刺激を与えるような真似をするか? どうやら久留間点滅は五百機さんが俺を『殺そうとする』所まではしてほしいみたいだが。


 「足止め? あぁ、それなら簡単だよ。さすがに我々、レベル3の悪霊は人材不足だからね。もう一人の栄助様を見つけるだけでもこんなに時間が掛かったし。面来さんももうすぐでこっちに来るとは思いますけど。そちらのジョーカーの足止めは彼等に任せています」


 地面から無数の白い服をきた長い爪、荒れている黒髪ロングの一般的に知られる『幽霊』が姿を現した。レベル2の人間に酷似した悪霊だ、人間に似ていると言っても奴等には感情が無い、ただ生存している人間を道連れにする事だけを目的とした、自立妖力の生物だ。


 「なんだよ、そいつらを制御できるのか」


 「制御ってカッコイイとこまでは無理かな。でも僕の能力で引き寄せたりする事は可能だよ? 僕って吸い込む対象は題名だけの設定でいいの。だから『レベル2の悪霊よ、集まれ~』ってイメージで空気を吸い込むだけで勝手に人海戦術が完成ってわけ。っまぁ、綾文功刀さんじゃないからそこから操作とかはできないけどね」


 何でもありか!! こいつ!!


 こいつの防御能力だが、ただ単純に空気の逆風の壁だけではないみたいだ。物体の移動による防御もありだ。先ほどの自動車を投げつけたように、今度は自動車を壁に置く事も可能か。それだけではなく、レベル2の悪霊を群がらせる事も可能か。能力の仕組みが単純なだけに応用力があるな。


 「ふっふっふ、これで分かってくれたかな? 僕の『大喰大吐出ファンデーションイーター』に弱点なんかないって事が!!」


 弱点がない、確かに思いつくあたり奴に攻撃を当てられる方法が思いつかない。近・中・遠の全ての距離で何もかもが無意味だ。拡散する奴の壁には突破口が見えない。


 「…………行弓君。言葉に踊らされるな。奴は最強の防御能力だのははったりだ。空気を利用した絶対防御か、取るに足らないな。寧ろ相性が悪いのは私ではなく、貴様だという事を教えてやる」

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