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平和

「は?」


 また相良が驚いたような顔をした、まあ確かに俺と柵野栄助が入れ替わっているという事など、納得できるはずがないだろうな。陰陽師の常識的に考えて。


 「お前、柵野栄助って名前だったのか。変な名前だな、男っぽいし」


 こいつ、名前を知らなかったのか。まあ確かに俺が始めて出会った時も、名前なんか教えて貰えなかったな。名前なんか無いと言って誤魔化していた。


 「それはどうでもいいんだ、頼むからここから出してくれ。本当に時間がないから。俺は残り三匹のレベル3の悪霊を倒さなきゃいけないんだ。だから……」


 「わぁー、急に帰って来たと思ってたら、実に見苦しい態度だなぁ~。お前ってそんな無様な醜態を晒す奴だったとは。そんなに橇引行弓なんかに強制送還されたのが気に食わなかったのか。そんな馬鹿げたハッタリで俺が騙せると思ったか?」


 何をカッコつけているんだ、あの馬鹿は。無様な醜態を晒しているのはお前だよ。真実を見破った事へ自己陶酔しているのか、俺が本物である以上、お前は完全に逆を考えているんだよ。


 お前は柵野栄助が動揺して冷静さを欠いていると考えているのだろう、だから自分が圧倒的な優位に立っていると考えている。だが、現実は真逆である。人間は状況が宜しい程、ミスに気が付かない。絶体絶命の状況である場合に必死に頭を回転できるように、人間は心地いい世界である程、何も考えなしいのだ。こういうのを何と言うか、そう平和ボケ。


 「おい、とにかく理事長に報告してくるから」


 「あぁ、もうそうしてくれ。お前に期待した俺が馬鹿だった。時間の無駄だ、早いところ理事長を連れて来てくれ」


 理事長は俺如きが柵野栄助から意識を奪い返せないのは分かるだろう。理事長は直接的に格納庫の場面で奴の圧倒的な存在感を知っている。だから俺が出来るであろう範疇も容易に判断できるはずだ。


 「なんか、言い方が気に入らないな。お前はこれから殺されるんだぞ。それとも理事長を誘き寄せる事が目的なのか」

 

 俺の態度に異変を感じたのか、それとも未だに正体を明かそうとしない俺に違和感があったのか。流石の自信家の相良でも、少しは疑い始めたか。


 「俺は本物の橇引行弓なんだよ。本当の奴は……、俺の体を乗っ取った後に残りの生き残っているレベル3の悪霊と合流して、日本中の妖力を持つ存在から妖力を奪い尽くす予定らしい」


 「……妙に具体的だな」


 だって俺が出来る事が見える世界を眺める事だけだったもん。あとは声を聴く事も出来たか。それ以外は何も動かせなかった、痛覚さえも共有していなかったのだから。


 「そういえば、理事長の所に行く前に二つ教えてくれないか。まずは、俺が鶴見や追継と霊界から格納庫に向かっている時に、お前達の方はどうなったんだ?」

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